デジタルな君にアナログな刻を
ほくほく顔で食べるわたし。奈々美さんも満足そうに大きなナンを平らげていく。
「ちょっと、こっちを食べてみる?」
辛口カレーの入ったソースポットを指し示す。普段なら絶対に辛口なんて手を出さないのだけれど、今日はつい好奇心に負けてしまった。
「いただきます」と代わりに自分の豆カレーを差し出し、一口大にちぎったナンをチキンカレーにとぷりと漬けさせてもらって、口に運ぶ。
「んんっ~!?」
口の中に広がった刺激に慌てて水を飲み込んだ。すると今度は、それがのどにも飛び火して。コップの水を全部飲みきったところで、ようやくなんとか落ち着いた。
「だ、大丈夫?」
明らかに奈々美さんが笑いを噛み殺しているのがわかる。だって店員さんに、お冷やのおかわりをお願いする声が震えていたから。
なにもつけないナンを口に放り込んでもぐもぐと咀嚼すると、その甘みでだいぶましになった。
奈々美さんはこの辛さを平然な顔で食べていたのか。自分との味覚の差に驚きながらも、残りの豆カレーを美味しくいただいた。
食べ終わってもまだ少し時間に余裕があるので、食後のチャイを味わいながらの女子トーク。
このチャイも美味しい! かなり砂糖が入っているはずのに、ショウガとシナモンがしっかり、だけど違和感なく主張していて甘ったるさを感じない。とても温まって冬には最適最強。これ、家でも淹れられるかな?
「でさ、私また転職するかも」
唐突に奈々美さんが告白を投下する。もったいなくてちびちびと啜っていたわたしは、ゴクリと音を立ててチャイを飲み込んでしまう。見開いた目だけで「どうして??」と訴えた。
「だってね。最近、これから同棲を始めるとか新婚さんの新居探しとか、ラブラブなお客さんばっかり来るんだもの。なんかむかつくじゃない?」
「でも、今の職場に入ってまだ2年目ですよね?」
今までに聞いた話だと、彼女はビジネス系の専門学校を卒業してから、28歳になる現在までに2回転職している。現在の不動産屋が3社目だったはず。
辞めた理由は、最初が「社内恋愛だった元彼がしつこく復縁を迫ってきたから」で、次が「上司のセクハラ・パワハラが酷く、上に訴えても流されたことに見切りを付けた」だったかな? 見た目のふんわり感を見事に裏切る、なかなか激しい性格の持ち主である。
「せめて職場にいい男でもいれば、モチべも保てるんだけど。あそこって、思いっきり年下か既婚のおじさんしかいないし」
「だからって、そんなに簡単に辞めちゃっても次を探すのが大変じゃないですかっ!?」
「そうなのよねえ」
わたしの切実な思いが通じたのか、奈々美さんはテーブルに両肘をついた手のひらの上に顎を乗せて深いため息をついた。
「ちょっと、こっちを食べてみる?」
辛口カレーの入ったソースポットを指し示す。普段なら絶対に辛口なんて手を出さないのだけれど、今日はつい好奇心に負けてしまった。
「いただきます」と代わりに自分の豆カレーを差し出し、一口大にちぎったナンをチキンカレーにとぷりと漬けさせてもらって、口に運ぶ。
「んんっ~!?」
口の中に広がった刺激に慌てて水を飲み込んだ。すると今度は、それがのどにも飛び火して。コップの水を全部飲みきったところで、ようやくなんとか落ち着いた。
「だ、大丈夫?」
明らかに奈々美さんが笑いを噛み殺しているのがわかる。だって店員さんに、お冷やのおかわりをお願いする声が震えていたから。
なにもつけないナンを口に放り込んでもぐもぐと咀嚼すると、その甘みでだいぶましになった。
奈々美さんはこの辛さを平然な顔で食べていたのか。自分との味覚の差に驚きながらも、残りの豆カレーを美味しくいただいた。
食べ終わってもまだ少し時間に余裕があるので、食後のチャイを味わいながらの女子トーク。
このチャイも美味しい! かなり砂糖が入っているはずのに、ショウガとシナモンがしっかり、だけど違和感なく主張していて甘ったるさを感じない。とても温まって冬には最適最強。これ、家でも淹れられるかな?
「でさ、私また転職するかも」
唐突に奈々美さんが告白を投下する。もったいなくてちびちびと啜っていたわたしは、ゴクリと音を立ててチャイを飲み込んでしまう。見開いた目だけで「どうして??」と訴えた。
「だってね。最近、これから同棲を始めるとか新婚さんの新居探しとか、ラブラブなお客さんばっかり来るんだもの。なんかむかつくじゃない?」
「でも、今の職場に入ってまだ2年目ですよね?」
今までに聞いた話だと、彼女はビジネス系の専門学校を卒業してから、28歳になる現在までに2回転職している。現在の不動産屋が3社目だったはず。
辞めた理由は、最初が「社内恋愛だった元彼がしつこく復縁を迫ってきたから」で、次が「上司のセクハラ・パワハラが酷く、上に訴えても流されたことに見切りを付けた」だったかな? 見た目のふんわり感を見事に裏切る、なかなか激しい性格の持ち主である。
「せめて職場にいい男でもいれば、モチべも保てるんだけど。あそこって、思いっきり年下か既婚のおじさんしかいないし」
「だからって、そんなに簡単に辞めちゃっても次を探すのが大変じゃないですかっ!?」
「そうなのよねえ」
わたしの切実な思いが通じたのか、奈々美さんはテーブルに両肘をついた手のひらの上に顎を乗せて深いため息をついた。