デジタルな君にアナログな刻を
*
まだ日も昇りきらない早朝。わたしは家路を急いでいた。
あれから、店長の左手首が再び熱を持ち始めてしまったのだ。そりゃあ、痛めているのにいろいろと酷使したのだから無理もない。
とにかく冷やした方がいいだろうとキッチンにお邪魔して、我が家の一週間分の食料でも収まりそうに大きな冷蔵庫のフリーザーを覗いてみても、保冷剤的な物はおろか、氷さえもなく。
「下で買ってきます。ほかになにか要りますか?」
「ん。一緒に行く」
お金を出すのは彼だから仕方がないけれど、左腕を庇いながら歩く姿は少し痛々しく見えてこっちが辛い。
「鎮痛剤もあるから、大丈夫。そんなに心配しないで」
無事な右手で頭を撫でられる。「大人」と認めてもらったと思っているのは自分だけなのだろうか。
深夜のコンビニで、氷と熱々のおでんを買うことにする。玉子にコンニャク、大根とはんぺん。くたくたに煮え味の染みこんだ具材が美味しそう。コンビニおでん初体験のわたしが目移りしていたら、店長が全種類を買いそうになったので慌てて止めた。
「ちょっと駐輪場に行ってきます」
エレベーターホールに店長を残して行こうとしたら、空いている左手で引き留められる。
だから、使わないでくださいってば。
「どうして?僕も行く」
「充電をしないと帰れないので」
この調子では、どうせ断ってもついてきてしまうのだろう。説得はそうそうに諦めた。
ビル裏にある自転車置き場までの短い距離で、ここへ来るに至った経緯を手短に話しながら歩く。カゴの中にそのまま残されていたビニール袋にほっとした。
これでは充のことを言えないなあ。
右手に充電器の入ったビニール袋、左手におでんを持つと、すでに右手に氷を持っている店長がわたしのビニール袋まで持とうとしたので、断固として断った。
すぐ戻るからと上着を羽織らずに出かけため、すっかり冷えてしまった身体が、十分に暖められた室内で解凍される。まずは、簡易氷嚢を作って店長の左手を冷やし、ちょっと冷めてしまったおでんをレンジで温め直した。
それにしても、見事なほど物がないキッチンだ。ヤカンさえ見当たらない。さっき覗いた冷蔵庫も、お酒やジュースなど飲み物が並んでいただけ。逆に牛乳が入っていたことが奇跡に思える。
程なく電子音がして、景品でもらったらしい陶器の白いボウルに移し替えたおでんが、ホカホカに戻った。
まだ日も昇りきらない早朝。わたしは家路を急いでいた。
あれから、店長の左手首が再び熱を持ち始めてしまったのだ。そりゃあ、痛めているのにいろいろと酷使したのだから無理もない。
とにかく冷やした方がいいだろうとキッチンにお邪魔して、我が家の一週間分の食料でも収まりそうに大きな冷蔵庫のフリーザーを覗いてみても、保冷剤的な物はおろか、氷さえもなく。
「下で買ってきます。ほかになにか要りますか?」
「ん。一緒に行く」
お金を出すのは彼だから仕方がないけれど、左腕を庇いながら歩く姿は少し痛々しく見えてこっちが辛い。
「鎮痛剤もあるから、大丈夫。そんなに心配しないで」
無事な右手で頭を撫でられる。「大人」と認めてもらったと思っているのは自分だけなのだろうか。
深夜のコンビニで、氷と熱々のおでんを買うことにする。玉子にコンニャク、大根とはんぺん。くたくたに煮え味の染みこんだ具材が美味しそう。コンビニおでん初体験のわたしが目移りしていたら、店長が全種類を買いそうになったので慌てて止めた。
「ちょっと駐輪場に行ってきます」
エレベーターホールに店長を残して行こうとしたら、空いている左手で引き留められる。
だから、使わないでくださいってば。
「どうして?僕も行く」
「充電をしないと帰れないので」
この調子では、どうせ断ってもついてきてしまうのだろう。説得はそうそうに諦めた。
ビル裏にある自転車置き場までの短い距離で、ここへ来るに至った経緯を手短に話しながら歩く。カゴの中にそのまま残されていたビニール袋にほっとした。
これでは充のことを言えないなあ。
右手に充電器の入ったビニール袋、左手におでんを持つと、すでに右手に氷を持っている店長がわたしのビニール袋まで持とうとしたので、断固として断った。
すぐ戻るからと上着を羽織らずに出かけため、すっかり冷えてしまった身体が、十分に暖められた室内で解凍される。まずは、簡易氷嚢を作って店長の左手を冷やし、ちょっと冷めてしまったおでんをレンジで温め直した。
それにしても、見事なほど物がないキッチンだ。ヤカンさえ見当たらない。さっき覗いた冷蔵庫も、お酒やジュースなど飲み物が並んでいただけ。逆に牛乳が入っていたことが奇跡に思える。
程なく電子音がして、景品でもらったらしい陶器の白いボウルに移し替えたおでんが、ホカホカに戻った。