デジタルな君にアナログな刻を
「自炊はしないんですか?ご飯はどうしているんですか?」
「ちゃんとテキトーに食べてるよ」
店長は四分の一にした大根を、はふはふしながら口に入れる。次に玉子を割ろうとするけど、お皿の上で転がって上手くいかない。見かねてわたしが手を出した。
「今度、ご飯を作りに来てもいいですか」
つゆが染みすぎて茶色くなったはんぺんをお皿に移しながら、さり気なく伺いを立ててみる。さすがにまた断られるのは耐えられそうもない。けど、
「ハンバーグと唐揚げが好き」
ベタなメニューにお皿から顔を上げれば、右腕で頬杖をついてこちらを物欲しそうに見ている店長と目が合う。途端、大きく口を開けられた。
「どうぞ」
はんぺんののったお皿を移動させても、口を閉じる様子はない。仕方なく割り箸で、はんぺんを彼の口まで届けた。
薬を飲んでもらい時間を確認すると、すでに2時近い。
自転車の説明書には、フル充電に5時間くらいかかるとあった。とりあえず片道分だけ足りればいいかな。どのくらいだろうとメモリを確認していると、頭の上に布が乗せられた。
「こんなのしかないけど、寝るだけだからいいよね」
広げたそれは、長袖Tシャツとハーフパンツ。どちらももちろん男物でかなり大きい。いや、そういう問題じゃないか。
「こんな夜中に自転車でなんて帰らせないよ。安心して。こんな手であれ以上なにかしようとか思わないから」
湿布を貼り直した包帯の腕を掲げてみせられて、少し、ほんの少しだけがっかりした自分に気づいて恥ずかしくなった。
角部屋の寝室はキングサイズのベッドとシンプルなフロアスタンドがあるだけ。ヘッドボードには、ジリジリとベルが鳴る懐かしい形の目覚まし時計が置いてある。
それのアラームを店長が8時にセットした。
「明日、仕事を休んでも構わないよ」
一度家に帰るとすればあと5時間も眠れない。でも年内最後の営業だ。
「大丈夫です。出ます」
わたしの言葉に頷くと、店長は布団に潜り込む。ふかふかの羽布団をめくって、自分の右隣をポンポンと叩いて示した。
「円ちゃん、おいで」
……やっぱりそこなんですね。躊躇っていても時間の無駄。意を決してベッドに上がった。
十分離れて眠れるのに、店長は右腕で腕枕をし、左腕はわたしを抱えるように腰に回す。「おやすみ」とおでこにキスをされ、あまりの恥ずかしさに顔を彼の胸に埋めると、さっとシャワーを浴びた身体からはシトラスのボディーソープが香る。
薄闇の中で耳に響く二人分の鼓動と、微かな秒針の音。
こんな状態では一睡もできない。そう思った次の瞬間には、すっぱりと意識が途切れていた。
「ちゃんとテキトーに食べてるよ」
店長は四分の一にした大根を、はふはふしながら口に入れる。次に玉子を割ろうとするけど、お皿の上で転がって上手くいかない。見かねてわたしが手を出した。
「今度、ご飯を作りに来てもいいですか」
つゆが染みすぎて茶色くなったはんぺんをお皿に移しながら、さり気なく伺いを立ててみる。さすがにまた断られるのは耐えられそうもない。けど、
「ハンバーグと唐揚げが好き」
ベタなメニューにお皿から顔を上げれば、右腕で頬杖をついてこちらを物欲しそうに見ている店長と目が合う。途端、大きく口を開けられた。
「どうぞ」
はんぺんののったお皿を移動させても、口を閉じる様子はない。仕方なく割り箸で、はんぺんを彼の口まで届けた。
薬を飲んでもらい時間を確認すると、すでに2時近い。
自転車の説明書には、フル充電に5時間くらいかかるとあった。とりあえず片道分だけ足りればいいかな。どのくらいだろうとメモリを確認していると、頭の上に布が乗せられた。
「こんなのしかないけど、寝るだけだからいいよね」
広げたそれは、長袖Tシャツとハーフパンツ。どちらももちろん男物でかなり大きい。いや、そういう問題じゃないか。
「こんな夜中に自転車でなんて帰らせないよ。安心して。こんな手であれ以上なにかしようとか思わないから」
湿布を貼り直した包帯の腕を掲げてみせられて、少し、ほんの少しだけがっかりした自分に気づいて恥ずかしくなった。
角部屋の寝室はキングサイズのベッドとシンプルなフロアスタンドがあるだけ。ヘッドボードには、ジリジリとベルが鳴る懐かしい形の目覚まし時計が置いてある。
それのアラームを店長が8時にセットした。
「明日、仕事を休んでも構わないよ」
一度家に帰るとすればあと5時間も眠れない。でも年内最後の営業だ。
「大丈夫です。出ます」
わたしの言葉に頷くと、店長は布団に潜り込む。ふかふかの羽布団をめくって、自分の右隣をポンポンと叩いて示した。
「円ちゃん、おいで」
……やっぱりそこなんですね。躊躇っていても時間の無駄。意を決してベッドに上がった。
十分離れて眠れるのに、店長は右腕で腕枕をし、左腕はわたしを抱えるように腰に回す。「おやすみ」とおでこにキスをされ、あまりの恥ずかしさに顔を彼の胸に埋めると、さっとシャワーを浴びた身体からはシトラスのボディーソープが香る。
薄闇の中で耳に響く二人分の鼓動と、微かな秒針の音。
こんな状態では一睡もできない。そう思った次の瞬間には、すっぱりと意識が途切れていた。