デジタルな君にアナログな刻を
午後3時 おやつ
わたしは就職先に安心安定を求め、安直に公務員を目指していた。

「公務員なら何でもいい」とはいうものの、大学は文系を選んでしまった……というか、理系がからっきしダメだった自分に技術職は無理。警察や消防は体力的にも自信がない。
その上、実家を離れるつもりがなかったので、自宅から通勤できる距離で異動範囲も狭い方がいい。

そんな調子で受験先を選んでいたものだから、自ずと受けられる数も限られてしまう。

公務員人気はいっこうに衰える様子がなく、地方公務員の行政職ともなれば倍率は凄まじいことになる。受験のための予備校なんかもあるけれど、わたしには金銭的にも時間的にもそんな余裕がなく、過去問を解くなどの勉強方法で補った。

第一希望にしていた市の職員は、元々の募集人数が少ない。近隣の自治体は住民票を置いていなければ受験資格さえもらえない所も多かった。それでも受験日が重ならず、可能なものは片っ端から受けたのだけれど……。

結果はものの見事に惨敗。

慌ててそれまで見向きもしていなかった一般企業を探してみたけれど、すっかり出遅れたわたしの希望する条件を満たすものなんて簡単にはみつからない。多少条件を緩めてみても、採用までは辿り着けなかった。

それでも単位は十分足りていたから、大学は無事に卒業させてくれる。
高校の時からずっと続けていた総菜屋のバイトはあったけれど、そこが正社員で雇ってくれるわけじゃないし。とにかく、バイトをしながらハローワークに通う日々を春から始めていた。

いくつかの会社に目星を付けても、タッチの差で他の人に決まってしまったり、募集をかけておきながら、あからさまに『女子はいらない』的な扱いを受けたりで心が折れかけていた時、やっと手応えを感じられる会社と巡りあう。

なるべく早く面接を、という先方の都合を最優先して、すでに予定が入っていたバイトを休ませてもらい、日時を大きくカレンダーに赤字で書きこんだ。

それほど大きな会社ではなかったけれど、電車で3駅。もちろん交通費支給。完全週休二日制で、GW・夏期・年末年始、有給としっかり休みももらえそう。その分、給料は決して多いとは言えないけれど、ボーナスも出るみたいだし、実家生活なら十分……かな?

とにかく、一日でも早く『正規雇用』という肩書きが欲しかった。
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