デジタルな君にアナログな刻を
結果は翌日の朝一で来た。正座して携帯を耳に当てる手が震える。
『大変申し訳ありませんが、今回は弊社とはご縁がなかったということで』
お決まりの文句で断られた。
やっぱり遅刻したためなのか、他にもっと違う理由があったのかはわからない。けれど、不採用という事実が変えられないのなら、もうなんでもいいや。
午前中いっぱい、ぼーっと過ごしていた。時計の針の進みがやけに遅く感じて、家にある時計という時計を全部5分ずつ進めてしまう。
そんなことをしたって、『さっきの電話は手違いで、実は採用です』なんて都合の良いメールが届くんじゃないかとつい見てしまう携帯や、だらだらと流れているテレビのワイドショーの画面左隅には、正確な時間がくっきりと表示されているから意味なんてないのに……。
当たり前だけど時間はちゃんと進んでいたらしい。よろよろと支度してバイトに行こうとしたら、天気予報通り、ぽつりぽつりと雨粒が落ちてきていた。
『市営住宅前』という停留所で待っていると、駅行きのバスが時刻表より4分ほど遅れてやってくる。いつもだったらこのくらいの遅れは想定の範囲内なのに、今日は無性にイライラしてしまった。
バイト先は、線路を挟んで駅の向こう側。昔からあるお肉屋さんと軒を並べるお総菜屋さん。お兄さんがお肉屋さんで、妹さんがそこのお肉を使ったお総菜を作ってを売っている。揚げたてのメンチカツが一番のオススメ!
忙しくなるのは夕方からで、昼間はまだお客さんも疎らだ。店主の真美子(まみこ)さんから、今のうちにパック詰めして欲しいと頼まれ、山盛りのきんぴらを指定された。
ゴボウに人参、レンコンとこんにゃくをちょっと濃い目に甘辛く炒めたきんぴらを、透明のフードパックに200グラムずつ入れていく。毎日のようにやっている作業なのに、妙に捗らないのはどうしてだろう。
「円ちゃん。そんなにキッチリ200グラムにしなくていいから。むしろちょっと多めくらいで構わないよ」
真美子さんに言われて気がついた。わたしはピッタリ200にしようとしていたんだ。ちょっと出た分の一欠片のレンコンを抜いてみたり、ほんの少し足りなければ人参を一本ずつ足してみたり。そんな調子でやっていたら、作業効率が低下するのは当然。
だんだん秤の数字が滲んでいく。
「いったいどうしたの? そういえば昨日、面接だったんだっけ? 結果はどう……って、その様子じゃダメだったみたいね」
ずずっと鼻を啜りながら頷くと、真美子さんはため息を吐き出した。
「なんでこんなに良い子をどこの会社も採らないんだろうねえ。まったく見る目がないよ」
首を横に振って嘆くと、揚げたてのコロッケを4枚パックに詰める。
「ウチで雇ってあげられたらいいんだけど、社員が持てるほどの店じゃないからさ、悪いね」
ここは真美子さん夫婦と、わたしの他にふたりのパートさんがいるだけの小さな店だ。バイトを続けさせてもらっているだけでも有り難い。
「ほら、今日はもう帰りな。涙や鼻水を垂らされちゃあ、こっちも困るからさ」
レジ袋に入れたコロッケをわたしに押しつけて、ポンポンと肩を叩く。ほっくりポテトコロッケの熱が手に伝わって、また鼻の奥がツン、となった。
『大変申し訳ありませんが、今回は弊社とはご縁がなかったということで』
お決まりの文句で断られた。
やっぱり遅刻したためなのか、他にもっと違う理由があったのかはわからない。けれど、不採用という事実が変えられないのなら、もうなんでもいいや。
午前中いっぱい、ぼーっと過ごしていた。時計の針の進みがやけに遅く感じて、家にある時計という時計を全部5分ずつ進めてしまう。
そんなことをしたって、『さっきの電話は手違いで、実は採用です』なんて都合の良いメールが届くんじゃないかとつい見てしまう携帯や、だらだらと流れているテレビのワイドショーの画面左隅には、正確な時間がくっきりと表示されているから意味なんてないのに……。
当たり前だけど時間はちゃんと進んでいたらしい。よろよろと支度してバイトに行こうとしたら、天気予報通り、ぽつりぽつりと雨粒が落ちてきていた。
『市営住宅前』という停留所で待っていると、駅行きのバスが時刻表より4分ほど遅れてやってくる。いつもだったらこのくらいの遅れは想定の範囲内なのに、今日は無性にイライラしてしまった。
バイト先は、線路を挟んで駅の向こう側。昔からあるお肉屋さんと軒を並べるお総菜屋さん。お兄さんがお肉屋さんで、妹さんがそこのお肉を使ったお総菜を作ってを売っている。揚げたてのメンチカツが一番のオススメ!
忙しくなるのは夕方からで、昼間はまだお客さんも疎らだ。店主の真美子(まみこ)さんから、今のうちにパック詰めして欲しいと頼まれ、山盛りのきんぴらを指定された。
ゴボウに人参、レンコンとこんにゃくをちょっと濃い目に甘辛く炒めたきんぴらを、透明のフードパックに200グラムずつ入れていく。毎日のようにやっている作業なのに、妙に捗らないのはどうしてだろう。
「円ちゃん。そんなにキッチリ200グラムにしなくていいから。むしろちょっと多めくらいで構わないよ」
真美子さんに言われて気がついた。わたしはピッタリ200にしようとしていたんだ。ちょっと出た分の一欠片のレンコンを抜いてみたり、ほんの少し足りなければ人参を一本ずつ足してみたり。そんな調子でやっていたら、作業効率が低下するのは当然。
だんだん秤の数字が滲んでいく。
「いったいどうしたの? そういえば昨日、面接だったんだっけ? 結果はどう……って、その様子じゃダメだったみたいね」
ずずっと鼻を啜りながら頷くと、真美子さんはため息を吐き出した。
「なんでこんなに良い子をどこの会社も採らないんだろうねえ。まったく見る目がないよ」
首を横に振って嘆くと、揚げたてのコロッケを4枚パックに詰める。
「ウチで雇ってあげられたらいいんだけど、社員が持てるほどの店じゃないからさ、悪いね」
ここは真美子さん夫婦と、わたしの他にふたりのパートさんがいるだけの小さな店だ。バイトを続けさせてもらっているだけでも有り難い。
「ほら、今日はもう帰りな。涙や鼻水を垂らされちゃあ、こっちも困るからさ」
レジ袋に入れたコロッケをわたしに押しつけて、ポンポンと肩を叩く。ほっくりポテトコロッケの熱が手に伝わって、また鼻の奥がツン、となった。