肉食系御曹司の餌食になりました
目を見開いて驚いてから、智恵はテーブルに身を乗り出すようにして、私に顔を近づける。
「支社長、本気で亜弓のこと好きなんだね。
なんで付き合わないの? さっさとOKすればいいのに」
「違うよ。交際を求められていないから。
あの人は、私で遊んでいるだけで……」
今まで話していなかった彼の攻め方をザッと説明して、私の心の状況も話した。
遊ばれてたまるかという意地で、辛うじて攻撃に耐えていることを。
人に話すと"かもしれない"という可能性の話が、"きっとそうだ"という確信めいたものに変わる。
彼は魅力的な男性。しかし、紳士的な見た目や言葉遣いとは裏腹に、中身は獲物を選ばない肉食獣。
心を許せば遊んで捨てられ、惨めな結果が訪れるのだと。
気づけば話しながら、ワインは二本目のボトルに突入していた。
絶対に惚れないようにしようと決意を新たにして、前菜の後に頼んだパスタやピザ、魚介料理を口に運ぶ。
「振り回されてるなんてカッコ悪い話、誰にもするつもりなかったけど、今日は聞いてもらえてよかった。
心の揺れが収まって、助かる。もう絶対にあの人の色気に流されない」
揺らした気持ちは結局、私らしい地味で現実味のある場所に収まってホッとしていた。
流されないという意思表示の後に、感謝を込めて微笑んだら、智恵に「そうかな?」と首を傾げられる。