肉食系御曹司の餌食になりました
「支社長って人気あるけど、浮いた噂のひとつも聞いたことないよ。だから、亜弓のことは本気なんだと思うけど」
「いや、だからね、地味な私だけじゃなく、アンにも迫ってくるんだよ」
「うーん、気づいてるってことは?
アンの正体を知ってるから迫ってる。そう考えれば、別に遊び人じゃないでしょ」
思いがけないことを言われ、口元に運ぼうとしていた私のワイングラスが、宙でピタリと止まった。
散々バレないようにと気を遣い、ハラハラさせられたりもしたのに、最初からバレてるって……?
智恵は『いいこと言った』と言いたげな顔をして、ニンマリとした笑みを浮かべている。
私達の関係を恋愛に仕立て上げたい智恵の推測に、ハタと考えさせられたが、すぐに却下の運びとなる。
「亜弓とアンが全然違うのは、智恵も知ってるよね? 初来店の日に疑われて驚いたけど、きっぱり否定したら納得したみたいだし、今はなにも言われないよ。
それにバレてるなら、副業を辞めるように言ってくるはず。仮にもうちの支社のトップなんだし」
私の説明に「そっか」と残念そうな顔して頷く智恵は、その後に「変なこと言ってごめん」と謝った。
シュンと肩を落とす彼女を見て、私は慌てる。
「こっちこそごめん。今日は智恵のお祝いなのに変な空気にしちゃったね。
もう支社長の話はやめよ。智恵の話を聞かせて? プロポーズの言葉はなんて言われたの?」