肉食系御曹司の餌食になりました
智恵が慌てて「なに言ってるの! そんな目で見られたことないよ」と訴えるも、酔いも手伝ってか、種田さんは「どうかな?」と、挑戦的な目を支社長に向ける。
優雅な手つきでワイングラスを口元に運び、大きなカットの牛肉を、スマートな動きでひと口で食べた支社長は、紙ナプキンで口元のソースを拭ってからニッコリ笑って種田さんに言う。
「私には亜弓さんがおりますので、どうぞご心配なく」
横から伸びる腕が私の肩に回され、引き寄せられる。
仕立てのよさそうな濃紺のスーツに密着しながら、手に持っていたグラスのワインがこぼれそうで私は慌てていた。
「は? えーと、冗談ですよね?」
思わずそう聞いた種田さんは、正直な人みたい。
支社長は男性から見ても、きっといい男。
私のような地味で冴えない女を相手にする理由が見つからなくて当然だ。
「冗談に見えるなら残念です」と答えた支社長に、種田さんは無言になる。
智恵が彼氏の腕をバシバシ叩き、「亜弓は否定するけど、やっぱりそうなんだよ!」と興奮していた。
どうにかワインをこぼさずに済んだ私は、今度は密着する左半身に意識が移る。
着衣越しに伝わる引き締まった体躯と、ほのかに香る甘くセクシーな彼の匂い。
次第に高鳴る鼓動と戦いながら、『これもいつもの思わせ振りな言動のパターンなんだから』と自分に言い聞かせていた。
でも……。