肉食系御曹司の餌食になりました
澄んだ冬空にたくさんの星が瞬く二十二時。
私は今、アルフォルトの三回目のステージに立っている。
着ているのはワインレッドのタイトなロングドレス。
支社長とブライダル会社を訪問したとき、マネキンが着ているカラードレスが素敵だったから、つい同じ色のステージ衣装を新調してしまった。
それに合わせるのは、ゴールドのピアスとネックレスで、黄みがかったスポットライトと客の視線を浴びて、本日のラスト曲『ジャスト・フレンズ』を歌っていた。
この曲を歌うとカイトの顔が頭に浮かび、このビルの九階で危うく襲われそうになったことも思い出す。
あれからカイトと二回、同じステージに立ったけど、もう復縁は求めてこない。
別れ方が強引すぎたと反省した私が『傷つけてごめん』と謝って、『いいよ、俺も悪かったし。新しい彼女もできたから心配すんな』と、そんな会話をした後は、上手くジャストフレンズでいられていると思う。
今日の演奏者の中にカイトはいない。
私の後ろでアルトサックスを吹いているのは別の男性で、気にしなければならない人はステージ上ではなく、バーカウンターにいて……。
今日の支社長は、三回目のステージから来店した。
きっと仕事が終わらなかったのだろう。
月曜から出張だと言っていたし、やっておかねばならないことが、いつもより多かったのか?
彼は私との企画以外にも支社長としての仕事をたくさん抱えているから、かなりの忙しさだと思う。