肉食系御曹司の餌食になりました
衣装と色が合わないというのは、もっともらしい理由。
我ながらいい返し方だと思い、心に余裕を持っていたら、ニッコリ笑う彼に直ちに切り返された。
「では、あのピアスに似合うドレスを買いに行きましょう。もちろん私からのプレゼントです。明日のご予定はいかがですか?」
「い、いえ、麻宮さんにそこまでしてもらう理由はないので。それに明日も、日中は予定が入ってるし……」
デートに誘われる流れになるとは予想外で、慌てて断ったのだが、彼は諦めてくれない。
「日中お忙しいのでしたら、夕方からで結構です。ドレスを買って、その後に食事をご一緒に」
「あ、そうそう、夕方からも予定があるんでした。アルフォルト関係の用事が……ね、マスター?」
マスターに話を振ったのは、助けを期待したから。
過去には店内で、他の男性客にデートに誘われたこともあった。『コンサートチケットが余ってるんだけど、一緒に行かない?』と。
そのとき話を聞いていたマスターが、『その日は他の店からアンにオファーが来てるんだ。悪いね』と嘘の理由をつけて助け舟を出してくれたのを思い出していた。
だから今回も話を合わせて、助けてくれると思ったのに……。
バーカウンターの内側にいるマスターは、シェイカーを振りながら首を傾げて私を見た。
「明日? 俺、アンになんか頼んだっけ?
ステージも入ってないし、麻宮さんとデートしてきなよ。店のない夜はいつも暇だって言ってたろ」