肉食系御曹司の餌食になりました
なんで相手が支社長だと、助けてくれないのよ。
まさか、またプレミア付きのジャズレコードをもらったとか?
マスターは私より支社長の方が大切なの?
驚きとショックを受けて言葉をなくしていたら、支社長の大きな右手が私の左手に被さった。
「決まりですね。では明日の十六時に、ご自宅まで車でお迎えに参ります」
「自宅は困ります!」
思わず大きな声を出したのは、智恵の婚約祝いで酔っ払った帰り道に、玄関前まで送ってもらったことがあるからだ。
慌てる私の反応を予想していたかのように、彼はクスリと笑って頷く。
「では十六時に札幌駅の小丸百貨店の地下入口で待ち合わせましょう。以前お渡しした、私の連絡先を書いた名刺はお持ちですか?」
「持ってますけど、まだ行くと言ってなーー」
「私は時間通りに間違いなくそこにいますが、万が一出会えなかった場合、連絡して下さい。
アンが来なかった場合、私もあなたに連絡します。マスターに連絡先を尋ねて」
それは……非常に困る。
私はスマホを一台しか持っていなくて、会社関係もアルフォルトの連絡も、同じ番号とアドレスでやり取りしているから。
マスターから連絡先を聞き出されたら、Anneと亜弓が同一人物だとバレてしまう。
口止めしたって、すっかり支社長のペースに嵌められているマスターなら、勝手に教えそうな気もするし……。
危うい予感に青ざめる私は、「必ず時間通りに行くので、私の連絡先を聞き出すのはやめて下さい」と言うしかなかった。