肉食系御曹司の餌食になりました
「私とデートして下さるなら、あなたの同意なしに聞き出すことはしません」
「麻宮さん……一度だけですよ?
私はお客さんとそういう関係になりたくないんです。これっきりにすると約束して下さい」
「約束しましょう。アンとのデートは一度限り。では私はこれで失礼します。ドレス選びのために、あのピアスを必ず付けて来てくださいね」
「楽しみにしています」という言葉を残し、彼は珍しく私より先に店を出て行った。
黒いコートの背中が消えると、彼のグラスに残る琥珀色のブランデーを見つめて、静かに心を乱す。
やっぱり彼はAnneにも手を出す、いい加減な男だった。
ひと月ほど前にステンドグラスの美しい教会で夢を語られてから、私の心はグラグラと揺れていた。
もしも、真面目な想いで見てくれるのなら、私だって気持ちを前に進めようかと思うのに、これではストッパーを外せない。
初めから思っていた通り、あっちこちで上手く女遊びをしているのが彼の本当の姿なんだ。
それがハッキリしたのに、なぜ私は今、胸を高鳴らせているのだろう?
正体がバレる危険性を感じながらデートを楽しみに思うなんて、マズイな、この気持ち……。