肉食系御曹司の餌食になりました


翌日のお昼過ぎ、グレーのスウェット上下という、なんとも色気のない格好をした私は、自宅でジャズを聴きながらミステリー小説を読んでいた。

でも本の内容はちっとも頭に入らない。

かれこれ十分は、同じページの同じ箇所を視線がなぞっているだけだ。

とうとう本を読むことを諦めてソファーから立ち上がり、寝室へ向かった。


広さ六畳の寝室は、シンプルなベッドと機能性重視の小さなドレッサーがあるだけという、私らしい地味な空間。

しかしクローゼットを開ければ、地味色オフィススーツの他に、華やかなステージ衣装が何着もハンガーに吊るされている。


手に取ったのは、スーツでも衣装でもなく、シャンパンゴールドの膝丈タイトなワンピース。

これはAnne用として最近買った普段着だ。

同じお金をかけるなら、ステージ衣装にかけたいところなのに、支社長が店に来るせいで、今まで必要なかったAnne用の普段着も買わなければならなくなった。

今日のデートはこれでいいかな。

その上に黒のボレロを羽織って、靴も黒のブーツで。

Anneのイメージからすると、地味だろうか?

いや、これに支社長からもらった存在感のあるピアスをつけるから、地味じゃないよね。

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