肉食系御曹司の餌食になりました
約束の時間は十六時で、今は十三時を過ぎたところ。
二十分前に出れば十分に間に合い、今から準備をするのは早すぎるのだが、朝からずっとソワソワしてどうにも落ち着かない。
その原因は決して甘い展開を期待しているからではなく、正体がバレたらどうしようという不安からのものだと、自分に言い聞かせていた。
デートに着ていく服を出して壁にかけ、ウィッグにアクセサリーやストッキング、使い捨てコンタクトレンズにAnne用のメイク道具一式までをベッドの上に並べたら、リビングの方からスマホの着信音が聞こえてきた。
寝室を出てリビングへ。
テーブル上のスマホを見ると、それは支社長からの着信で、慌ててジャズのCDを止めて通話に出た。
「はい、平良です」
『麻宮です。休日に申し訳ありません。
お伝えするべき重要事項があるのですが、今、大丈夫でしょうか?』
「はい。どうぞ話して下さい」
重要事項と言われて緊張し、メモ用紙とペンを手に取る。
それは、昨日、現場で最終確認した施工業者から、変更したい箇所が発生したとの連絡が入ったという話だった。
すぐに対応できることならいいけど、ガラスの発注をかけているうちの会社の工場や輸送に影響が及ぶと、時間的に困った事態になる。