肉食系御曹司の餌食になりました

ガラスの発注をかけているうちの工場や、配送手続き関係には全く影響のない、書類上だけの変更点が少々。

そんなもの、メールで指示してくれれば、月曜日に私ひとりでも終わらせられるのに。

支社長ほどの人がそれを分からないはずがないので、なにを考えているのだろうと、訝しげな視線を向けていた。


彼は革張りの椅子からおもむろに立ち上がると、机を回り込み、私との距離を詰めてくる。

警戒しながら後ろに半歩下がり、「なにか企んでいますか?」と聞いたら、紳士的な顔立ちの口元だけが意地悪く笑った。


「やらなければならない事柄は、早目に片付けておくのが私のやり方です。時間に余裕ができれば、視野を広く保つことができますので」

「そうですか……」

「もっともそれは仕事に関してのみ。
恋愛に関しては、じっくり時間をかけて楽しむのが私のやり方です」


ゆっくりとした動きで距離を縮めてくる彼と、じりじりと後ずさる私。

ドアに背中が付き、これ以上、後がない状況でスーツの腕に囲われた。

急に色香を大放出させる瞳に見つめられ、鼓動は上昇の一途をたどる。

彼の顔にさ迷わせた視線が唇に止まると、数ヶ月前の二度に渡る美味しいキスを思い出して、コクリと喉を鳴らした。


すると艶のある声で「欲しいのですか?」と聞かれる。

「そんなこと思ってな……んっ」

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