肉食系御曹司の餌食になりました
三度目のキスも、とろけるように甘美で濃厚なキス。
しかし、ほんの数秒で唇を離され、物足りなさを感じてしまう。
もっとして欲しくても言えずに目を伏せると、私を囲う腕も外され、色気を消した爽やかな口調で言われる。
「さあ、仕事をしましょうか。
私は十六時に人と待ち合わせていますので、時間がなくなります」
なによそれ……。
私とのキスよりAnneとのデートが魅力的?
なんだか変な気持ちがする。
Anneは私なのに、負けた気分ですごく不愉快……。
「こちらで仕事をしますか? それともミーティング室を使いますか?」と聞かれ、「支社長はどうぞこちらで。私は事業部でやります」と答えて、不機嫌さを隠せない顔のまま支社長室を出た。
今日は一段とからかわれている気持ちがする。
それはこの後にAnneとしてのデートが控えているせいだろう。
今までの色気のある展開の全ては、やはり彼の女遊びの一部だった。
さっきのキスを含め、不覚にもそれらに胸を高鳴らせた自分を恥じていた。
二十八歳の私は子供じゃないのに、彼の前だと翻弄されて、手の平で転がされているみたい。
そんな自分は嫌だから、もう二度と心を揺らすものかと、パンプスの踵を叩きつけるようにして階段を上り、無人の事業部へと入っていった。