肉食系御曹司の餌食になりました

「そうでしたか」とアッサリ騙される彼は、私の隣に並ぶ。


「では参りましょう。まずは約束のドレスを買いに」


このデートの目的は、アメジストのピアスに似合うステージ衣装を買ってもらうためだ。

昨日のアルフォルトでそういう話になったけれど、それを嬉しく思えない。

今後、店内で特別扱いしろという態度を取られたら、どうしようと考える。


どうやらこの小丸百貨店の中でのショッピングを予定しているらしく、彼は私の腰にさりげなく腕を回してエレベーターの方へと歩き出した。

近すぎる距離に赤くなることもできないのは、少し前に支社長室で、もっと濃い関わりをしたせいか、それともドレスを買ってもらうことに気が乗らないせいか。

その気持ちが顔に表れていたのか、エレベーター待ちをしながら彼が言う。


「ドレスを買ったからと言って、見返りは求めませんのでご安心を」

「その言葉をどうしたら信じられますか?」と返したら、彼は苦笑いする。


「あなたの目に映る私は、随分と信用のない男のようですね。アンの前で不誠実な姿を見せていないつもりですが、なぜでしょう?
まるで私の他の顔も知っていると言いたげに見えますよ」

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