肉食系御曹司の餌食になりました

ほつれって……。

天然思考は持ち合わせていなくても、わざと着ている服の袖口を気にする仕草を見せていた。

それは自分のため。

そうしないと『まさか』という危うい予感が膨らみ、平常心でいられなくなるからだ。


結局、オーダーメイドで黒いロングドレスを購入することとなった。

色が白なら、ウェディングドレスに使用できるような高級シルク生地で、裾は少しだけ膨らんだAライン。

ウェスト位置には黒いリボンが結ばれて、上半身にはレースがふんだんにあしらわれている。

ステージ衣装にしては露出度が低く抑えられているのが気になったが、『もっとセクシーな大人の雰囲気を』とは注文を付けられない。出資者は彼だから。


さっき値段を気にしたせいで、総額いくらになるのか教えてもらえなかった。

前払いらしく、私に見えないようにカードでスマートに会計を済ませた彼は、再び私のウェストに腕を回して店を出た。


「ドレスの出来上がりが楽しみです。
初めて着る日は、必ずアルフォルトに聴きに行きます」


彼は出張で札幌にいない日を抜かして、私のステージには必ず現れる。

どんなに忙しくても無理やり仕事を終わらせて、ほんの少ししか聴けなくてもラストステージの途中に息を乱して来店する。

そんなにAnneを気に入ってるの?
私よりも……?


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