肉食系御曹司の餌食になりました
時刻は十七時になっていた。
この後はどこかで食事をしておしまい。
デートは今回の一度きりと約束してくれたから、仕事を絡めずに彼と出かけることは二度とないはず。
彼が予想外の企みをしていなければの話だが。
連れて行かれたのは、小丸百貨店の隣にあるタワーホテル九階のフランス料理店。
ここは有名シェフの名前の付いたレストランで、土日ともなれば予約が取り難いと思われる。
やはりこのデートは彼の企みで、かなり前から計画されていたことの証拠だろう。
そのことに加えて、こんな高級店で食事をすることにも不愉快になる。
亜弓のときにも外勤途中や残業帰りなど、何度もご馳走してくれたけど、庶民的な場所ばかり。
Anneにかけるお金と意気込みが随分違うものだ。
いつも高級店に連れて行ってほしいという思いではなく、差をつけられたことに胸が痛む。
そして、自分に嫉妬するという滑稽さに呆れる私も同時に存在していた。
入口でコートを預けて、黒服のウェイターに席へと案内される。
さすがに夜景の見える窓際席の確保はできなかったようで、壁側の入口に近い席だった。
ウェイターの引いてくれた椅子に座ると、メニューを一部ずつ渡された。
「お好きなものを」と彼に言われても、「なんでもいいです」とメニューを見ずにパタンと閉じてウェイターに突っ返す。
ウェイターは私と似たような年齢の中肉中背の男性で、営業スマイルを崩さずにいても、その目には非難の感情が浮かんでいた。