肉食系御曹司の餌食になりました
仕事の電話とは誰からだろう?と考える。
私との企画の関係者なら、気になるところだ。
考えながら白ワインのグラスに口をつけ、魚料理を黙々と食べ終えたそのとき、今度は私のハンドバッグからスマホのバイブ音が聞こえてきた。
取り出すと支社長からの着信で、驚いて落としそうになる。
気づかないことにして無視しようかと思ったが、仕事関係者からの着信の後にかけてきたということは、やはり私との企画絡みだろうし、出なければまずいのではないかと思い直した。
でも私まで店外に出ては食い逃げみたいで気になる。それに支社長と鉢合わせるのも困る。
手の中のスマホのバイブ音は一度途絶えて、またすぐに震え出す。
まるで早く出ろというかのように。
それでマナー違反を気にしつつも、入口を気にしながら、この場でこっそりと通話に出た。
「はい、平良です」
『ああ、良かった。繋がりました。
亜弓さん、今どちらに?』
「ええと……まだ会社です。出社ついでに企画とは無関係の仕事もやってしまおうと思いまして」
咄嗟に嘘をついてから、ハッとしてマズイと焦り始める。
周囲には食事を楽しむ人の声と、小さく流れるクラシックピアノ。
会社にいないことは明らかで、さらには背景音からこの店にいることに気づかれるのではないかと青ざめた。
しかし彼はそれについてなにも言わず、『それはご苦労様です』と労ってからすぐに用件に入った。