肉食系御曹司の餌食になりました
相反する自分の気持ちに心で疑問を投げつつも、「帰ります」ともう一度口にする私。
断られた支社長は意外とアッサリ引き下がる。
「ではタクシーで、ご自宅まで送りましょう」
「いえ、結構です。まだ夜も遅くないですし、日用品を買って帰りたいので、ここでお別れです」
「そうですか。分かりました。今日はお付き合い下ってありがとうございました」
差し出された右手と握手すると、彼の手の温もりを感じた。
私より少し温度が高くて、大きくスッポリと包み込むようなその手に心地よさを感じる。
この手と、手を繋いで一緒に歩くことができたなら……ふと、そんな気持ちにさせられて、慌てて手を離して首を横に振る。
「アン?」
「なんでもないです。それじゃ麻宮さん、今度はアルフォルトで」
背を向けて歩き出す。
エレベーターでホテルのロビーまで降り、クロークに預けていた荷物を受け取ると、ハンドバッグの中のスマホが震えた。
ロビーのソファーに荷物を置いてスマホを取り出すと、また支社長からの着信だった。
それを目にしてガックリと項垂れ、ソファーに座り込む。
"まさか"の気配を感じていた。
まさか、バレているのだろうか……という疑惑を。