狼少年、拾いました。
ゼーラは焦った顔をした母親に家の奥の棚の陰へ押しやられた。

そこからそっと顔を出して様子をうかがうと、扉の向こうに立っていたのは見たことのない2人の男のようだった。

旅人の装いをしているが二人とも立派な剣を携えている。

とにかくただの庶民が旅をしてるのではないことが分かった。

領主の兵士がゼーラの家にも話を聞きにやってきたのだ。

年上の方の、髭を蓄えよく鍛えられた肢体をもつ男が尋ねた。

「すまない、少しききたいことがあるんだが。男を知らないか?黒い髪に、目の色は……そうだな、獣のような目をしているのだが。」

ゼーラはギュッと心臓を掴まれたような気がした。

「知りませんねぇ。そんな方、この辺りでは珍しいですからすぐ噂になりますでしょうけど、そんな話は聞いたこともないですよ。」

武骨な見た目に反して穏やかな尋ね方だったためか、母はほっとしたような表情をわずかに滲ませて答えた。

次に口を開いたのはもう1人の若い男だった。

「この村ではお宅で最後なんですがねぇ、どこか離れたところにどなたかお住いじゃあありませんか?いらっしゃれば一応その方にも__。」

「そんな世捨て人みたいな方、ここらには居ませんよぉ!」

男が最後まで言い終わらないうちに母は大袈裟な口調で答えた。

村人たちはミェルナのことは村の外の人間には隠していたので、今回もそうするつもりらしい。

母は男たちが探している者がどこにいるのか知る由もないだろうが、ゼーラには分かっていた。

(ミェルナ、ごめんね。あなたが嘘をつかなければ良かったのよ。)

ゼーラは棚の陰から飛び出した。
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