次期社長と甘キュン!?お試し結婚
 なんだか堪らなくなって、私はベッドに一歩近づくと、直人の正面に立ち、頭を撫でていた。思ったよりも柔らかい髪が手を滑る。

「どうした?」

「撫でてばかりじゃなくて、たまには撫でられるのもいいでしょ?」

 驚きながらも直人はそのままだった。それに対し、私は照れ隠しもあって、ぶっきらぼうに答える。いつもと違って、直人は座っているので、今は自分の方が目線が高く、頭も撫でやすい。

「晶子には、みっともないところばかりを見せてるな」

「そんなことない。直人は十分にかっこいいよ」

 いつもなら照れてしまって言えそうにない台詞だが、なんだか直人が小さい子どものように思えて私はすかさず否定した。もちろん、本心だ。

「直人、三島さんと会ったとき、ちゃんと丁寧に頭を下げてたでしょ? 人間ね、偉くなればなるほどそういうことができなくなるんだって。でも、仕事ができるっていっても結局は人を相手にするわけだから。だから直人のそういうところ……尊敬してるよ」

 尊敬、でいいのだろう、ここは。いつも余裕たっぷりで、社長代理としてしっかり仕事をこなしている彼も、こんな風に甘え下手で、意外と涙もろいところとかも、全部ひっくるめて私は直人に惹かれていると思う。それを口に出すことはできなかったけれど。

 その代わり、彼に言い聞かせるように頭を優しく撫でながら続ける。

「大丈夫、会社のためにわざわざ外国から帰ってきて、社長の代わりに一生懸命仕事しているの、ちゃんと知ってるから」

 もちろん、それは私だけではない。他の社員たちだって一緒だ。直人は少しだけ頭を動かした。
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