次期社長と甘キュン!?お試し結婚
「気まずくなるような別れ方でもしたのか?」

「そういうわけじゃない。私が振られただけ」

 直人の声はいつもより硬く、言い方も厳しいので、どこか詰問されているような雰囲気だった。

「なら、どうして晶子が欠席するんだ。未練でもあるのか?」

「ないよ、全然ない。そこまで言うほど、深く付き合ってなかったし」

 さらに尋ねようとしてくる直人の言葉を制するように私は続けた。

「だって、彼は私じゃなくて本当は、朋子のことが好きだったから」

 消え入りそうになって告げると、直人は目を白黒させた。ここまで話すつもりはなかったのに。この話を直人にはしたくなかった。少しはかっこつけたかった。唯一の恋愛経験がこんなものだなんて笑ってしまう。

 でも、事情を話さずに、上手く話を進められるような器用さを私は持ち合わせていない。相手が直人だから、尚更だ。

「彼とは、それなりに話もして仲もよかったから。私、告白とかされたのもはじめてで、嬉しかったし、断る理由もなくてOKしちゃったんだけど。でも、彼はずっと朋子の方が気になってたみたいで」

 その頃から女優として活躍していた朋子は、学校もなかなか来られる状態ではなかった。彼は、藤沢くんは、私と一緒にいて楽しかったし、好きだと思ったから告白してくれたと言っていた。

 それでも、やはり付き合っていく中で、なにか違うと思ったのか、なにも知らない私に罪悪感を抱いたのかは分からない。けれど、本当の気持ちを話してくれた。
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