次期社長と甘キュン!?お試し結婚
「どうしてそうなる?」

「え、だったらなんで……」

 直人はわざとらしく、大きくため息をついた。

「ちゃんと理由も説明せずに悪かった。でも、晶子は晶子だろ。そういうことじゃなくて、今度の同窓会、あとはそれなりの服を着て、ちゃんと参加してこい。三日月朋子の姉としてじゃなくて、三日月晶子として」

 今度は私が目を丸くする番だった。

「心配しなくても、妹に関係なく晶子だって十分に魅力的だ。ただ、久しぶりに会う人間には、それぐらいがいいだろ? 元彼にもクラスメートたちにも、ちゃんと分からせてやれ」

 それだけ告げると、直人は視線を前に戻してエンジンをかけた。胸の奥がじんわりと熱くなって、すぐに言葉が出ない。だから私が言えたのは随分、後からになってだった。

「ありがとう」

 消え入りそうな声で告げると、直人はこちらを見ないまま、軽く口角を上げて応えてくれた。直人の顔なんてもう見慣れていると思っていたのに。

 それなのに、そんな仕草ひとつに勝手に胸がしめつけられて、彼の横顔から私はしばらく目が離せなかった。直人はその視線を別の意味でとらえたのか、「心配しなくても、映画はまた今度、必ず行こう」と言ってくれた。

 そういうつもりではなかったのだけれど、つい笑みが零れる。

 直人はすごい。はじめて会ったときから、俳優さんみたいに素敵で、王子様みたいな外見と身のこなしで。でも、どうやらそれだけではなく、魔法使いでもあったらしい。

 私の見た目だけではなくて、気持ちもこんな風に変えてくれるのだから。
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