次期社長と甘キュン!?お試し結婚
「でも、そういった弱い俺をさらけ出せるのは、晶子以外にはいないから、やっぱり晶子じゃないと駄目なんだ」

 その言葉に目を見開く。さりげなくフォローしてくれた直人の言葉に、私はまた目の奥が熱くなって戸惑った。

 直人の涙もろいのが移ってしまったのだろうか。私はこんな簡単なことで泣いてしまうような人間だったのか。

 いや、簡単なことなんかじゃない。直人のことが好きだから、直人の一挙一動で一喜一憂させられるのだ。

 昔みたいに、いちいち朋子と比べて、落ち込んで卑屈になって。でも、そんな黒くて悲しい感情の波に攫われそうな私を、こうして救いあげてくれるのも直人だけだ。だから

「私も、直人と結婚したい」

 抱きしめられたまま、ぽつりと呟くと直人は目を白黒させて腕の力を緩めてくれた。密着していた部分が離れて熱が逃げていくのが少し寂しい。それでも私は直人の顔を一度見て、伏し目がちになりながら続けた。

「私もおばあちゃんの昔の約束とか、直人が社長になるためとか、そんなの関係なく直人と結婚したい。本当はずっと社長代理じゃない直人に惹かれた。こんな私でよければ、結婚してください」

 言葉の勢いに乗せて頭を思いっきり下げると、直人は顔を嬉しそうに綻ばせた。

「こちらこそ。こんな俺でよければ」

 真面目に受け答えして、それがあまりにも今更で。それから二人で顔を見合わせて、改めて笑い合った。嬉しくて、幸せで泣きそうになる。もしも結婚するなら、と私が出した条件は、こんなにも幸せな形で彼は叶えてくれたのだった。
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