次期社長と甘キュン!?お試し結婚
『もう、仕事の話が終わったらずーっと晶ちゃんの話よ。まぁ、私が一方的に色々話すんだけどね、直人さんはそれを嬉しそうに聞いてるの。それでつい話に夢中になって、あんな写真撮られちゃったんだけど』

「私の、話?」

 初対面の二人にとって、共通の話題といえば私かもしれないけど。あの週刊誌に載った楽しそうにしている二人の写真は、私の話で盛り上がっていたらしい。少しだけ安心した後、とんでもない不安に襲われる。

「って、朋子、直人にそんなになにを話したの?」

『なにって、小さいときのエピソードや一緒に映画出演した話や、晶ちゃんの好きな俳優さんや好きな映画とか、それから……』

 まだまだ言い続ける朋子の言葉を聞き流しながら、ここでようやく合点がいった。直人があの映画のDVDを知ったのは朋子からの情報だったのだ。それでね、と続けられた朋子の言葉で、ようやく我に返る。

『直人さん、私に「お見合いを断わってくれたこと、今では感謝してます。あなたが断わってくれたおかげで、俺は晶子に出会えたから」なんて言うのよ! それを演技でもなく素面で、真顔で! しかも、私に向かって「晶子に似ている」なんて言うし。ちょっと女優三日月朋子のプライドが傷ついちゃった』

「ご、ごめん」

 私が謝る立場ではないのだが、反射的にそう言うと、電話の向こうで朋子は声をあげて笑った。女優ではなく、私の知っている妹の朋子の素の笑い方だ。
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