次期社長と甘キュン!?お試し結婚
「謝らなくていい。それに、無理させるのは本意じゃないんだ」

 何気ない直人の言葉が引っかかった。“無理をしている”そんなつもりはないけれど、朋子にも、航平にも言われたことだ。

「私って、そんなに無理してるように見える?」

 不安混じりに尋ねると直人は私に触れながら答えてくれた。

「見える、というより、晶子は怒らないから、こっちとしては、不安になるときがある」

「怒らない?」

「見合いをしたときも、俺がじいさんの条件を隠していたときも、晶子は怒らなかっただろ? 付き合ってた男が妹のことを好きだ、って言って晶子を振ったときも、酔った勢いでキスしても晶子は全然怒らないんだ、って妹も心配していた。相手にぶつけることもなく、全部ひとりで我慢して、折り合いをつけちゃうからって」

 ふざけながら朋子がいつも私に絡んでくるのは、どうやら私をわざわざ怒らせるためだったのか、と驚く。今更ながらに、朋子にも航平にもそんな心配をかけさせていたのかと思うと申し訳なくなってきた。

 複雑な思いを抱えたままでいると、直人がそっと頬に口づけてくれた。真剣な眼差しが私に向けられていることに気づく。

「この結婚自体、ずっと俺がこっちの事情で色々と進めてきたけど、嫌なことは嫌だって言ってくれてかまわない。怒ってもいいんだ。ひとりで抱え込まなくても、ちゃんと俺も付き合うから」

 直人の優しい言葉と声が胸に響いてなんだか痛い。すごく苦しいのに、でも不快ではない。
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