次期社長と甘キュン!?お試し結婚
「私、怒ったりするの苦手なんだ」

 ぽつり、と呟く。元々怒りの沸点が低いのか、何度も諦めてきたからか、もうこれは性分だ。

「でも、直人が朋子と親しくしているのを知って、すごく嫌だった。直人が元々は朋子と結婚したかったって言うのを改めて聞いてすごく悲しくて。直人のこと諦めないと、っ思うと切なくて。だから、直人のことはひとりで折り合いつけられないことばっかりだよ」

 無意識のうちに、ぎゅっと彼のパジャマを掴む。

「また泣いて困らせるかも。それでもいい?」

 そう言って緊張しながら、目線を合わせる。すると直人はふっと笑みを零して唇を重ねてくれた。

「もちろん。晶子の弱いところも、さらしてもらえるなら嬉しい」

 そんなことを言われたのは、はじめてで、なんだかくすぐったい。でも私だって気持ちは同じだ。直人の弱いところを見せてもらえるなら、見せてもいいと思ってもらえるなら、それはすごく嬉しい。

 なんたって私たちは結婚するのだから。

 自然と笑顔になって、今度は自分から直人に口づける。勢いとはまさにこのことだ。恥ずかしさよりも、キスしたいという気持ちが勝ってしまった。

 直人はきょとんとした表情を見せてから、いつものように余裕のある笑みを浮かべると、すぐにお返しとばかりにキスをしてくれる、

 触れるだけのキスを何度も繰り返しているうちに、次第にじりじりと焦げるような感覚に戸惑う。この気持ちがどこからくるのかは分からない。
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