次期社長と甘キュン!?お試し結婚
 そして、触られたところが化学反応でも起こしたかのように熱を帯びていく。主導権は彼が握っているのに、ちゃんと私のことも考えてくれる。

 キスの合間に見せてくれる穏やかな笑顔に私はなんだか泣きそうになった。

 それから、どれぐらい口づけを交わしていたのか、はっきりと分からない。ゆっくりと顔を離されて、至近距離で見た直人の顔に、また胸がしめつけられる。

 どこか余裕がなくて、切なくて、でも優しい。逆に今、自分はどんな顔をしているんだろうか。直人の瞳にはどう映っているのか。

「可愛いよ」

 じっと彼の顔を見つめていると、心を読んだかのように告げられて、私は慌てた。そんな私を見て直人は苦笑する。

「あまりにも晶子が不安そうな顔をするから」

「そ、それは」

「やめるか?」

 私の心臓は大きく跳ねた。きっとこの問いかけが最後だ。不安がまったくないわけでもない。直人だって疲れているだろうし。でも、それでも

「やめないで。その、私……」

 照れもあって上手く言葉が続けられない。直人にもっと触れて欲しくて、もっと近づきたくて、この気持ちは本物だ。彼はなにかに耐えるような表情で、私と視線を交わらせる。

「もうやめて欲しいって言っても止められないからな」

 私がなにかを口にする前に、それを阻むように直人が唇を重ねてきた。
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