次期社長と甘キュン!?お試し結婚
「俺がいなかったら、彼を家にあげていたのか?」

「そんなことしないよ!」

 まさかの問いかけに、噛みつくように答える。さすがに、そんなことはしないし、そんなつもりは毛頭ない。航平だって直人がいたから、顔を出しただけで、あそこで別れるつもりだったはずだ。

 そこで直人の眼差しを受け、先ほどの発言も合わせて理解した。

 私、疑われているんだ。

 航平があんなこと言ったから? 私と直人の間に気持ちがないから? それでも一応、結婚を前提に一緒に暮らしているのに。

 直人にとって私は、そんな信用もない人間なんだ。

 頭がくらくらするのは、お酒のせいなのか、この状況のせいなのかはよく分からない。私は掴まれている手と反対の手で頭を押さえた。直人はさらに続ける。

「彼と付き合ってたんだろ?」

「付き合ってない。航平とは従弟だって言ったでしょ」

「晶子は付き合ってもいない男とキスするのか?」

 その声に幾分か、軽蔑の色が込められていて、私は唇を噛みしめた。その件についての弁明よりも、先に直人に対しての感情が走る。

「それは、直人もでしょ?」

 小さく呟いて、私はようやく直人の顔を見る。一度、息を吸って言葉を続けた。

「直人だって、好きでもない私にキスするくせに。たかがキスなんでしょ? 同じじゃない!」

 感情任せに出た言葉は八つ当たりにも等しかった。なんで私だけ責められないといけないのか。なら、直人の私にしていることはなんなのか。

 直人のキスは私を振り向かせるためだけのもので、そこに彼の気持ちなんて、なにもないのだ。
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