イジワル御曹司に愛されています
「あ、本当にそうなんだ?」

「高校が同じなんです。失礼しました、無礼な奴と思われたでしょう」

「いやいや、楽しそうだなって見てただけだよ、仲いいんだね」


都筑くんは一緒になって笑いつつ、「よくはないです」と冷静に一蹴した。

そこまではっきり否定しなくても…。


「クラスが同じだったとか?」

「いえ、違います」


振られた問いに私は慌てて答えた。とはいえ、あかねとも話した通り、実はそんなに確信がない。


「…たぶん」

「たぶんてなんだよ」


当然ながら、当人に眉をひそめられる。


「だって…」

「ね、この程度ですよ」


にこ、と愛想よく松原さんに話しかける都筑くんが、ちょっと気を悪くしているように見えるのは、気のせいだろうか。気のせいだろうね…。

私は頃合いを見て対面に移動し、先生方にお酌をしてからまた席に戻った。すると驚いたことに、お取り皿が食べ物で満杯になっている。


「ありがとう、手が届かないのばっかりで、あきらめてたの!」

「食いたいって心の声が聞こえてたよ」

「…私ってなにか、大食いのイメージ?」

「自分の胸に聞けば?」

「都筑くんの前でそんなに食べたこと、ないよね?」


なんでそこまで言われるのかと訝しんだ私に、彼が人の悪い笑みを浮かべてみせる。


「まあ、最近はそうかもな」

「最近はって」

「当時のお前といえば」

「…あ!」


思わず飛びついて向こうの口をふさいだ。都筑くんは面白がって、続きを言おうとする。

いかにもお酒の席という感じの、短時間のみっともない攻防ののち、私の手は都筑くんに捉えられ、動きを封じられた。

私の手をすっぽり包み込んでしまう長い指、男の人らしい手。ドキドキしてうろたえて、にやにやと笑われているのに耐えかねて。

もう!


「どうせ太ってましたよ!」
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