イジワル御曹司に愛されています
ふうん…。

都筑くんが横目でこちらを見る。


「ほんとは、なんで親父の会社に入らなかったのかって聞きたかったんだろ」

「都筑くんて、鋭いねえ」

「お前がわかりやすいんだ」


仕方なさそうにため息をついたので、話してくれるのかと思ったのだけれど、黙って歩数を重ねるばかりで、いっこうに返事が来ない。


「…あの、回答は?」

「答えてやるなんて言ってない」


そう来るかあ…。

まあいいや。個人的なことだし、私にわざわざ言う必要もないっていうのも、わかる。


「ここ、最近できた北欧雑貨のお店。安くはないけど、いいものばっかりあるから、女の子は絶対喜ぶよ」

「へえ」

「あとあそこはね、私も行ったことないんだけど、わりとにぎやかなバーらしくてね。週末になるとすごく楽しそう。見た感じ、女の子も入りやすそう」

「…へえ」

「この先のラーメン屋さんは忘れちゃいけないよね! 流行りに乗らないあっさり系で、毎日食べたくなる味。水餃子があるのも女性人気の秘密かな」

「待て、なんでどれもこれも、俺が女連れで来る前提なんだ」

「えっ」


予想外の突っ込みをもらってしまった。


「違うの?」


だって私の中で都筑くんといったら、必ず横には女の子がいる。それはもう、付属品のように、ぴったりくっついて、我が物顔に彼の腕を抱いて。

彼がげんなりしたように顔を曇らせた。


「違うよ…」

「今、女の子いないの?」

「なんだよ、"女の子"って」

「彼女と言うには、数が多すぎた気がするから…」

「なんの話?」

「高校のときの話だよ、当然」


ほかになにがあるの。

はべらせていた自覚はあるらしく、都筑くんは舌打ちでもしそうな表情で、ふいと目をそらす。
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