スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「つい半年前まで、らみの感情はちぐはぐだった。本だろうがアニメだろうが映画だろうが、何を見てても、その場面の喜怒哀楽の解釈がうまくできなかったんだ。
感受性がないわけじゃねえ。説明すれば理解する。でも、直感的にわからない。おれは、らみが不憫だった」
いきなり何の話だろうと、わたしはいぶかしみながら、頼利さんを振り返った。
夜の車内の暗がりに、赤外線センサーで自動点灯する我が家の玄関の明かりが差し込んで、頼利さんの彫りの深い顔に陰影をつけている。
ドキリ、と心臓が鳴ったのをごまかすために、わたしは全力で、先生としての自分に徹しようとした。
「らみちゃんは人一倍、感受性が強いと思います。その一方で、確かに、人が感情を表現するときにどんな表情、仕草、行動をするか、読み取り方をわかっていない部分もありますね。
国語の物語単元には、らみちゃんにとって、謎かけみたいな文章が多いようです」
「でも、あんたは、らみと一緒にその謎を解いてくれる。なぎさ先生はどんな質問にも答えてくれるから国語の授業がおもしろくなったって、らみが言ってた。
1年生のころの教科書まで持ち出して、解けなかった謎をあんたに質問しに行ってんだろ?」