スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「ちょっと連絡がしつこかったくらいで、実際は杞憂に終わったけどね。あの時期は毎日、俊くんかおじさんが駅までの送り迎えをしてくれたよ。
おばさんって厨房からほとんど出てこないけど、そのそばにいさせてもらったりもした。すっごく守ってもらった」
うちの家族と俊くんの家族と、親戚よりもよっぽど親しい付き合いは、昔からだった。
おじさんとおばさんがお店で忙しいから、小さいころの俊くんはよくうちに来ていた。
もっと言えば、俊くんを幼稚園に迎えに行くのは、わたしと母の役目だった。
ふた家族で、まとめてひと家族だった。
わたしが今でも飛梅に毎日通うのは、家に帰り着いて「おなか減った、ごはんちょうだい」と言うのと同じ感覚だ。
と、そんなことをつらつら語ったら、美香子先生は、ほわっと柔らかく笑った。
「それを聞いて安心したわ。なぎさ先生にとって、俊文くん一家は家族同然で、俊文くんは弟同然なのね」
「うん、そう。恋愛の対象には絶対になり得ないくらい、本当に、あまりにも身近で」
「じゃあ、俊文くんはわたしがもらってもいい?」
そのトマトはわたしが、って言うのと同じくらい何気なく、美香子先生は微笑んで言った。
わたしはポカンとしてしまって、ことの重大さに気付くまでに少し時間がかかった。