スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―


「たぶんなんですけど、加納の婚約者の女性、器の大きい人だと思うんです。

細かくあれこれこだわって注文ばっかりの加納を、笑っていなしながら、注文を上手にかわして、自分を保っていられる人」


「あの男は、その態度が許せねぇんだろ?」


「そうですね。自分の思いどおりにならなくて、イライラしてる。今までの自分の価値観が通用しなくて、焦ってる。

加納自身は器が小さいから、彼女の寛大さが理解できないんです」


冷静に分析できる自分に気付いて、わたしは少し驚いた。

そうか。

加納って、器の小さな人間だったのか。


BGMのジャズが、ふっと柔らかくトーンダウンした。

管楽器が鳴りを潜めて、ピアノがアドリブのソロを弾いている。

ドラムとコントラバスが敷く道の上を、ピアノは軽やかに色っぽく、自在に踊る。


「わたしも弾いてみたいのに」


できないって言われて、信じ込んでた。

ジャズピアノ、確かに難しそうだけど、ウォーターサイド・ジャズ・オーケストラのサウンドの中にあれば、複雑ささえオシャレで、楽しそうだから触れてみたくなる。


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