咲くやこの花、誠の旗に


少し経ってから平助が腕に着物を抱えて戻ってきた。


「持ってきたぞ!
着物の着方くらいは分かるよな?」


「あっ、はい大丈夫です。

それじゃあえっと…、どこで着替えれば…?」


咲耶はキョロキョロと辺りを見渡しながら聞く。


「そこの襖の向こうが茶の間になっているからそこで着替えるといい。
今は誰もいないはずだから安心してくれ。」


近藤はそう言って目の前の襖を指差した。


「分かりました…!
それじゃあ、お借りしますね。」



咲耶はそれから茶の間に入り襖を閉めた。


そして平助に渡された紺色の着流しを羽織る。



(鏡がないからどんな感じなのかさっぱり分からないな。)


着流しを着終わると咲耶は手首にはめていた黒いゴムで短い髪を下の方で1つに纏めた。

下ろしているよりはそれっぽいかな、と思ったからだ。


着替えを終え、咲耶は脱いだ制服を腕に持ち襖を開ける。


「着てみましたけど…。

どう、ですか?」


咲耶が2人の前に立つと、その姿を見た2人は『おお』と小さく歓声を上げた。


「なかなか良いのではないか?
可愛らしい少年のようだ。

なぁ平助?」


「う、うん。
男って言われればそう見えなくもないかな。」


なんだその微妙な感想は、と咲耶は内心思ったがとりあえずは男に見えるということに安堵し胸をなでおろした。



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