咲くやこの花、誠の旗に
ーー


(勝手に話が進んで平助さんと試合することになっちゃったけど、いくら剣術を習っていたとはいえ現代の教えがこの時代で通用するのかな…。)


そんな心配をしつつも、三度の飯より剣術が好きだった咲耶の心の中には誰かと試合が出来ることへの高揚感も少しあった。



「今から稽古着に着替えるのは面倒だろうし袴だけ貸すからそれを履けよ」


「はい」


咲耶は左之助から袴を受け取り、それを床に置いてから着流しの裾を帯の部分にたくし上げ、尻端折りをした。


これは袴を履く際、袴の中で着流しの裾が邪魔にならない為にすること。


咲耶は普段稽古着を着るときにこれを毎回していたので、慣れた手つきで済ませる。



何ともない顔で脚を晒す咲耶の様子を見た平助はギョッとし、小声で咲耶に耳打ちする。


「むやみに肌を露出させるのやめろって…!」


咲耶は訳が分からない様子だったが、すぐに言葉の意味を理解し急いで袴を履いた。


「す、すいません…。」


(この時代の感覚に慣れるのは難しいな…。)



そんなこんなで、試合の準備が整う。


ちょうど良く稽古が終わる時間と重なり門下生たちは帰っていった為、今道場にいるのは咲耶、平助、宗次郎、左之助、新八、近藤の6人。


近藤は始め咲耶が試合をすることに反対していたが、平助から事情を聞き了承した。


「咲耶さん、どうぞ」


宗次郎が咲耶に竹刀を手渡す。


「ありがとうございます」


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