新・鉢植右から3番目
そんなわけで、去年の私は、後半が忙しかったのだ。妊娠の安定期に入ってから、馬のように働いて、自分の理想の家をデザインし、建てて貰ったのだった。
その家は一つの大きな空間を家族で共有できるようにしている。そして外せなかった縁側と、庭。
私の大好きなアロエ、椿、木蓮と紅葉。独身時代の一人暮らしの時にも漆原大地との共同生活時代にも育てていた鉢植達。家の中も外も緑でいっぱいにして、いつもそれを眺めては喜んでいる。
そして、大事な玄関先の鉢植達。
新婚の時にアパートの玄関前に置かせてもらっていた棚は、補強して塗りなおし、新しい家は玄関の横あたりに専用のくぼみを作ってそこに設置して貰った。
ミニトマトや苺などの食べられるものからサルビアやサボテンなどの観賞用まで、私のお気に入りの鉢たちを並べている。
そして、我が家の大事な約束ごと、「大切なものはここへ」と決めているその場所、鉢棚の、上から2段目右から3番目の鉢植には黄色の花を咲かせるヒヤシンスが。
この鉢植は、私の決意と感謝の表れなのだ。
私と結婚してくれて、ありがとう。私に笑顔をくれて、ありがとう。そして、私は十分に幸せです、そういう言葉をこめた、可愛い鉢植なのだ。
今日もヒヤシンスの鉢の下には、この家の合鍵が隠されている。
いつでも家族はここに帰ってくる。そのための鍵は、あそこにある────────────