別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「理沙は印象的だったから」

「……そんな事はないでしょ?」

それなりに外見には気を使っているつもりだけど、私は人の印象に残るタイプでは無いと思う。

メイクは無難にブラウン系。服も基本色。
ヘアスタイルは普通のストレートロング。これが一番経済的で、それなりにの見た目を保てるから。

そんな感じで、要はこれといって目立った個性的な特徴が無いのが私なのだ。

疑いの目を向ける私に、奏人が答える。

「昼休みに理沙は必ず電話番をしていただろ? どうしていつも同じ子が残ってるんだろうって気になったんだ。

「……あーなるほど」

私達の会社【さくら堂】には残念ながら社員食堂が無いからランチはお弁当を持って来るか外食かになる。

国内営業部の女性は外食派が多くて、お弁当派の私が自然とお昼の留守番みたいになっていた。

「職場で孤立してるのかと思って部長にさり気なく聞いた事が有ったんだ。そしたら彼女は孤立している訳じゃなくお昼代を節約しているんですよって言われたんだ」

「部長が?」

真実なんだけど、部長にまで把握されていたとは。

「それでその時、こうも言われたんだ。『中瀬さんは家庭の事情で経済的に苦労しているそうで、将来の夢は玉の輿だって話ですよ、叶うといいですねって』」

「ええっ?」

う、嘘でしょ?
私、なんでそんな評判になってるの?

貧乏なのは本当だけど、玉の輿なんて昔も今も夢見てないし。

私、そんな野心家じゃないし!

でも私って、他人から見たらそんな評価なんだ……凹んでしまう。

「理沙、部長は悪い意味で言ったんじゃないならな。理沙には頑張って欲しいって感じで言ってたし」

頑張れって玉の輿目指して婚活を?

奏人的にはフォローのつもりかもしれないけど、全く気休めになりません。
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