勘違いも捨てたもんじゃない
ピンポン。
「どうぞ。いらっしゃい。…あ、れ?」
「武蔵さんは下で別れました」
「そうなの?…さあ、入って。…それ、着てくれたんだね」
頂いたもの、どれも全て記憶しているのだろうか。適当ではなく、一つ一つ吟味して選んだのだろうか。
「あ、はい、頂きましたので、サイズもピッタリな事、お見せしておこうと思って」
「思った通り、よく似合ってるよ」
「…有難うございました。素敵な物を色々沢山。受け取りましたが、あれでは頂き過ぎです」
「いや、誕生日も何もあげられてなかったし、いいんだ何も気にしないで受け取って欲しい。
持って来てくれてた中から俺が選んだんだ。他の物も全て、こんな風に着て俺に見せてくれ」
やっぱりそうだったんだ。…え?。全部着て見せなきゃ駄目なの?…それはちょっと…。
「フ、さあ、こっちに。…座って」
椅子を引いてくれていた。…あ、はいはい…。
「有難うございます」
「完食してしまわなくてもいいから、全ての味を確認して欲しいんだ」
テーブルにはもう並んでいた。
「解りました」
試食なんて…どうしたら。ハンバーグ、ポークソテー、チキンソテー、クリームコロッケ、メンチカツ。そして唐揚げ。オーソドックスな物ばかりだ。
「珍しい物を扱っても最初だけだ。廃れるのは早い。スタンダードな物で、味に間違いのない美味しい物を作って提供する事にした」
…確かに。結局たどり着くのは定番の美味しさだと思う。そこに行けば間違いの無い味が楽しめると思える店があると嬉しいものだ。ランチメニューは洋食屋さんといったところかな。あ、エピフライもあるといいかも。
「今日は主に肉料理だけ。他に白身魚のムニエルとか魚料理も追加であるんだ」
うん、魚好きな人は居る。…今日は肉料理だけ?。……追加?試食は今日だけではないのかな…。
「では食べて見てくれるか?」
「……あ、はい…」
白い取り皿が重ねられていた。何から食べようか迷ってしまう。一度に見てしまうと仕方ない。
「迷う?じゃあ、こっちから順番にしよう」
「あ、はい」
そうだ、それでいいんだ。好きな物を選ぶ訳ではない。メニューとして綺麗な写真で色々見てしまうと注文も迷ってしまう。それと同じかな。でも今日は大事な試食。それぞれを少しずつ食べていく事にした。
…うん。間違いない。どれもとても美味しいと思った。お店によっては味が濃すぎたり、塩分が割ときつかったりと色々あるのだけれど。そんな事も無いと思う。だからといってインパクトがない訳でもない。表現はとても難しい。
「あの、すみません。美味しいから、美味しいとしか言えません。ストレートですみません」
「うん。パンもライスも食べて見て。風味だとか甘さだとか。硬さ、パサつきだとか?」
「あ、はい。あの…お肉そのものが美味しいのだと思います。美味しい物を食べて育ったお肉みたいな。…お肉の香りもいいです。だからですかね。ハンバーグはふっくらしてますし、ソテーのお肉は柔らかいです。焼き方も凄く上手なんでしょうね。…すみません、素人が生意気に、知ったような口をきいて」
…こんな感じで大丈夫ですかね。
「また食べたくなります」
「ん、有難う」