勘違いも捨てたもんじゃない
そんなことを言われたら、あるともないとも言えないこと、少し不安になってしまう。…あんなこと…あんな目にはもう二度と遇いたくない。


「すみません。結局、部屋まで送って頂いて」

「否、これで安心だ。眠れる。じゃあ、入るまで見てるから」

「あ、はい。すみません。それではおやすみなさい」

「ああ、おやすみ」

ごねた挙げ句、車に乗せて貰って帰って来た。
課長は知らないはずだけど。元係長に襲われたこと、それが過ったから。中に入って頭を下げた。 課長は頷いて帰って行った。

はぁ…。ワンピースを脱ぎ、着替えた。ここを出る時と今とでは、こんなに違ってしまうなんて。 ……そもそもだ。私が行かなければいい事。…。…どうして。…じゃない。安住さんは何かしら言ってた、いつも。それに、好きだとも。そんな人のところへのこのこ私は…。今日、それを武蔵さんの前でだ。…嫌な気にならないはずはないのに…。貰ったワンピースまで着て。
今までだって…、深く考えもしないで…私がほいほいした態度でいたからいけないんだ。取り返しがつかないこと…もう、どうしたらいいか…解らない…。
武蔵さんからは着信が無い。今日、無いのは不安。

ブー、…。あ、武蔵さん。

【真希、メールが嫌なら会って話してもいいんだ。俺は真希の事、好きだ。だけど諦めたんだ】

え?……な、に?

【諦めたら、もう、終わりだ。だからもう個人的に会う事はないから。物に罪はないし、真希に貰った物だから、手袋は大事に使わせて貰うよ】

これでいい…。ある程度の時間で真希が一人で帰っていると知らせて来た事は嬉しかった。迎えに出ようかと、止められない程、胸が騒いだ。だけど、ここで留まらなければ、訳が解らない事の繰り返しになる。
…結婚することを踏まえ、真希と決めて、秘書を辞め、一緒に暮らし始めていたら良かったかな。俺のような男が、真希を中途半端な状態で繋ぎ止めておく事は無責任だ。結婚がないなら、好きだけで長く引っ張ってはいけない。……言わなかった後悔が、振られるよりも一番の後悔だ。

…真希、好きだ。…堪らない。そう思わせてしまったかも知れないが 決してセフレのような関係ではない。真希と身体を交わすのは好きだ。でもそれだけではない。こうなって、自分の心の奥にあった、凄く好きだという気持ちに気づくなんてな。それなのに諦めようとするなんて…。気持ちはあっても…だけど、どうしてもモヤモヤするんだ。それが俺の気持ちを引かさせたんだ。真希、お前は浩雅のことが…あいつのことが…。

武蔵さんのメールを読み、後は記憶が無い。
私は翌日、会社を無断欠勤した。
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