勘違いも捨てたもんじゃない
……はぁ…寒い。珍しく雪が降った。道にもうっすらと積もっていた。よく聞けば、サクッ、サクッと、踏み締める度音がした。少し凍り始めているようだ。
来てはいけないと思った。でも来てしまった。
営業時間は知らない。でもこれだけ遅い時間なら大丈夫だろうと思った。あの頃、そんなに遅い時間迄は開けないような話をしていたから。
遅いという事は人気が無くて恐いのだけど。
…以前とは違う。カフェがある事で明るさを感じた。
「うわぁ…出来てる。いい感じ…素敵…」
フェンスの向こうにある為、入って行く事は出来ない。
私道を挟んで広めのオープンテラス。ウッドデッキに開店と同時にテーブルや椅子が並べられるのだろう。そして、閉店したらしまうのだろうから、中々の運動になりそうだ。
奥の建物部分は窓の部分が大きく造られていてテーブルと椅子がセットで並んでいた。更にその奥は横に長く厨房。前のカウンターに座ったお客様に、毎日ランチメニューが作られ提供されるのだろう。サイドメニューと供に選べる。珈琲を飲み、デザートを頬張りながら静かな時間を過ごす。
『今日は雪が降ったのよ』
『ああ、寒かったね』
『あ、ママ、あそこに鳥がいるよ』
『そうね。雀かな、木の実を食べに来たのかな』
『今日は暖かいなぁ』
『はい。ケーキセット、何にしましようかね』
日中の陽射しと供にそんな会話が聞こえて来そうだ。
薄い雲が流れ、月が顔を出した。はぁ、…満月だった。綺麗…。冴え冴えとした空にきりっと白く輝いていた。
はぁ、…。うん、…帰ろう。
「…お嬢さん、もうお帰りですか?お食事はお済みですか?」
…後ろからの声に心臓が跳ねた。全く気配を感じなかった。
「お急ぎでなければ、私と…、夜ですが、ランチをして頂けませんか?」
…ドクドクバクバクと張り裂けそうだ。
「確か、この公園で約束をしてくれたと思いますが」
…この声。
「カフェテラスでランチを、と」