勘違いも捨てたもんじゃない
「朝、起こしてくれ。優しく起こしてくれ。じゃないと殴ってしまうかも知れない。気をつけてくれ」
「はい?」
朝?仮眠程度でいいのでは?そんな、…朝まで居るつもりなのでしょうか…。殴るって、毎朝どんな寝起きなの?優しくって、どうするの?
「浩雅と呼んで、肩を叩いてくれたらいいから…」
はぁ、その程度でいいのね。
「解りました」
「あと、常温の水が欲しい」
「解りました」
あ、またもう片方の腕も握られた。
「あと、…約束だ。傍に居てくれ」
「解りました。お水を持って来ますから、…離してください」
誰かこうして毎晩宥めて寝かしつけているのかしら。…まさかね。…眠る為の…女性が居るのかも。………世界の違う人は…生活もよく見えてこないな…。はぁ。
ボトルのお水を手に寝室に戻った。床においてあるランプの明かりだけを残し、部屋の明かりを消した。
…クイーンでもキングでも無い。辛うじてセミダブル。…ど真ん中に寝ているこの大きな人の傍に寝るの?
見下ろすように眺めていた。
「…戻ったのか」
「わっ」
…はぁ…、びっくりした…。よく知らないけど、映画とかで見る殺し屋さんみたいに鋭敏な気がする。気配を感じたのか起きていたのか…、はぁ。うつらうつらしてるって事なのかな。…眠いのを必死で堪えてるのかしら。そもそも睡魔とのバランスがよく解らない。眠りはいつも浅い人なのかしら。もの凄く眠いのでは無かったの?…ちょっと移動で歩いたから、睡魔は先伸ばしになったとか…もう目が覚めたの?
では帰っても大丈夫なんじゃ…。
「はい。ごめんなさい、大きな声を出してしまって。お水はここに置きます」
ベッド脇のチェストに置いた。
「ここに、…一緒に寝てくれないか。傍に…」
傍にって…そう何度も言われても。と思っていたら少しだけ身体をずらした。そうでしょうけど……でも。だけど、ですよ。どうしてこんな事に。確かに解りましたと約束のような事は言ったけど。
…どうしたものかと…微動だにしないでいた。いきなり起き上がったと思ったら腰を抱かれた。え、…。こんな事…。
「待っていても無理か。こっちから引き寄せないと嫌かな?自分からは入り難い?大丈夫…何もしないから」
…もう、アウトかも知れない。そのまま脚を抱えるように片腕を回し、一度身体が重なり横に寝かされた。力強い。暴れる間もなかった。…どうしてくれるんですか、こんな事…あなたは裸なんですよ?パン一なんて…ドキドキしてしまうじゃないですか。
「こうして、傍に居て…少し、腕を回してくれ…それだけだ…」
これでは、まるで私が抱いているみたいになる…。何もしないになるの? 安住さんは私の腕の中に居る。到底収まりきらないほど大きいのに。
「…これは…脱いだ方がいい…」
カーディガンの肩を開けられた。…腕を抜き、下に落とされた。
「…これでいい」
どこまで寝ているのやら…さっぱり解らない。また、安住さんは腕の中に自分から収まった…。これだと顔が、肌が直接触れる。
何だか解らないけど、首から胸の間に収まっている頭を撫でた。丸く小さくしている身体。背中をゆっくりと何度も撫でながら抱きしめていた。