勘違いも捨てたもんじゃない
「え!あ、はい」
慌てて出した。手を取ると徐に嵌められた。何だか、よく解らないがぴったり収まった。
「よし、行くか」
青になった。
「え?何ですか?これ…え?」
「見ての通り、指輪だ」
それは解っている。何か、仕事上の試作品?サンプルとか?
「真希、何も言わないから」
「え?」
「誕生日。欲しいモノ、時間以外言わないから」
「え?誕生日?」
…あっ!。
「そう。まさか嘘の誕生日教えた訳じゃ無いだろ?」
忘れてた。え、じゃあ、これ…これって…。
「うん、はい。嘘じゃないです。…あ」
指輪をはめた手を握られた。
「だったら、誕生日おめでとう、だろ?」
…あ、いきなり…指輪なんて…。
「気に入って貰えたかな?真希ちゃん」
「…気に入らないです…こんなの…」
これを渡して私を降ろしたら、きっとすぐ帰る予定なんだ。時間の無い中、往復時間を計算して、連絡もせず…駄目だった時の事を考えて…、それであそこに居たんだ。
「え?さっきは凄くいいみたいに言ってた…」
「捕まらない程度にスピード違反してください」
「え?」
「安全を完全に確保出来る範囲でです」
最初から無理難題な要求だ。違反と危険の要求だもの…。
「…解った」
握っていた武蔵さんの左手、私の頭に少しの間だけ置かれた。
高速を走っている訳では無い。人も当たり前に多い。無茶をお願いしたのは解ってる。まして混む時間帯でもある。
武蔵さんはショートカットしながら、信号の少ない道を選び走った。
「着いたな」
「あ、どれくらい早く?」
「ん、多分…、七、八分くらいじゃないかなあ…」
七、八分か…。
「降りて!」
「あ、おい、真希、どうした…今度は何…」
「部屋に行くの!早く。エンジン止めて、来て、早く!」
「あ、ちょい、真希、車、ここ…」
「少しの間だから大丈夫!早く来て!」
武蔵さんの動作が遅く思えて焦れったくなった。降りた武蔵さんの手を取り、マンションの中へ走り込んだ。
「…真希、どうした、危ないだろ」
階段を駆け上がる。肩からショールが落ちた。
「お、真希、あ〜落ちたぞ。おい、真希、待て。何の競争だ?」
「後でいい。私が取りに来るから、いいから来てください」
部屋に着いて慌てて鍵を開け、武蔵さんを押し込んだ。
「はぁ、はぁ……だって、…はぁ、時間が無い…はぁ、武蔵さんは…帰っちゃうから…」
息を整えてる暇はない。
あ?ん、……んん、ん。真、希?
背伸びをして急くように武蔵さんの唇に重ねた…。
「んん゙…真希、ん…どうし…ん」
「ん、はぁ…、だって…時間が無い。…武蔵さん帰っちゃう…そうでしょ?。嬉しくない訳なんかない…だけど、…嫌…」
あ、ギュッと抱きしめられた。
「…真希、時間ならある」
………え?訳が解らなくて離れて見つめた。
「…あ、嘘です、だって…ドライブって…」
「ドライブはドライブだ。そうだろ?」
「そうだけど…、時間が無いからすぐ帰るんでしょ?…」
「いいや?」
「え゙っ?違うの?…じゃあ、あるの?…時間…」
「…あるんだな、それが」
顔を覗き込まれた。あ…嘘。…かぁ。恥ずかしい…。必死過ぎた自分が物凄く恥ずかしいじゃない。
「車、七、八分ならそのままで大丈夫なんだろ?」
「…は、い。…多分ですよ…」
「フッ。…真希?折角真希が作ってくれた時間だ。このままもう少し有効に使おう…」
え、ぁ…ん、…んん。…武蔵さん…。啄むように…甘く、そして深く…長くて余計息があがる…。
「ん、…有難うな、真希」
「…え」
…恥ずかしい。
「時間。一生懸命作ろうとしてくれて。嬉しかったよ」
抱きしめられた。…かぁ。
「…もう、早とちりしたんだから、恥ずかしい…それはもう言わないでください。それに…厳密に言ったら、武蔵さんに作ってもらったんだし」
「どっちでもいい。何でもいい。嬉しいよ、凄く」
ん。軽く唇が触れた…。
「はぁ、さて、と、車行くか」
「え、どこに行くの?」
「帰るんだ」
「…え、嘘…」
「本当」
「…だって、今、時間あるって」
「あるから帰るんだ。真希と、俺の部屋に」
あ、…。もう…。
「……嫌い…意地悪が過ぎます…もう」
「楽しんで頂けたかな?…嫌いは困る」
「もう…あぁもう~っ!」
ぁ…軽く食むように何度も唇が触れた。はぁぁ…ドキドキハラハラの連続だ。一向に動悸は治まらない。…一緒に居られる。思ってもみなかった。嬉し過ぎて心臓がもたないかも。
「…真希がさ、誕生日の準備、自分の部屋にしてるか一応確かめておきたかったから、先にここに…ドライブって事」
…あ、…もう。狡い…。嬉しい…。