勘違いも捨てたもんじゃない
「ここだ、入って」
「…はい」
ここが…武蔵さんの住んでるマンション…。
「これ…、武蔵さん…」
部屋に連れて来られた。
テーブルには目を引くような料理が用意されていた。
「真希…、はぁ…、ずっと会いたくて堪らなかった…」
手を引かれリビングに入り、前に押された。
立ち尽くしている背中を抱きしめられた。密着した首の横で甘い声が聞こえ唇が耳に首に触れた。なんて嬉しい誕生日…。武蔵さん…。
「…私も」
会いたかった。…触れたかった。
「中途半端に連絡したら、余計、会いたくなるから、暫くわざと何にもしなかった。ごめん」
「ううん…いいの…」
「今日、上手く真希を拾えなかったらどうしようかと思った。計画は全てパーになるからな」
「言ってくれたら…」
あ、駄目だ。もし急に社長の用でもできたら…。私をがっかりさせてしまうから…。今、居られてるってことはその心配は無くなったってこと。
「指輪、気に入ってないなんて違うから。凄く気に入ってるんだから。有難う、…嬉しいです」
回された腕、腰の前で組まれていた手に、手を重ね、振り返って抱き着いた。
「もう…、本当、あんな事、びっくりさせ過ぎなんだから。心臓に悪い…。キャーッて悲鳴をあげて、そのまま走り去っていたら犯罪ですよ?」
「フッ。悲鳴はあげなかったよな。そんな間は与えなかったから。真希、お腹空いてるか?」
「まだ…それ程でも…」
あ、唇がまた耳に首筋に触れた。
「じゃあ、後だな…」
テーブルには綺麗に盛り付けられた料理とケーキが用意されているのに…。
「あ、でも、これ…キャッ」
抱き上げられた。
「大事なのは、こっち。真希を先に食べたい」
はぁ。…海の底に居るような気がした。沈み込んだ大きなベッドはまるで深いブルーの海だった。
「…ドキドキしてるな…」
「もう…、そんな事、言わないで…」
ドキドキしないはずがない。武蔵さんの部屋…初めて来たんだから。それなのにもう寝室に運ばれちゃって…。もうこんな…。
「うん、…虐めると可愛いから、…ついな」
…ん。ゆっくりと唇が重なった。…沢山したい…。
「…真希、お姉さんになったな」
「ちょっとの間だけです」
…。
「武蔵さん…」
「…ん?」
「武蔵さんの誕生日は…何が欲しいですか?」
あ…。ん。
「んー、物欲は特に無いんだよな」
「でも、私、何も言って無くてこんな素敵なモノ貰いました。ん」
話し終わる度、キスが落ちてくる。
「お返ししないと、みたいに思うなら、要らないから。俺は…俺も真希と同じかもな」
「…え」
「何が欲しいって…こうして、…一緒に居られたらいいかな。んー。だからその日は取り敢えず、可能な限りずっと時間空けておいて欲しいかな。都合がついて、いきなり訪問して、…襲いたい」
キャ。
「…こんな風に、な」
…あ、武蔵さん…。
「でも解らないから…期待はしないで居て欲しい」
「…はい」
「ん…、聞き分けが良すぎる。そこは無理でも…嘘でも、絶対来てねって言うところだ」
「言わない。言うと期待してしまうから。でも期待して待ってる」
「それそれ。だから今日だって、時間を作った」
「有難う…ぁ」
……武蔵、さん…。
「ん…、真希、お腹空いた?」
「…まだ。まだ…大丈夫…」
「フッ。…よし」
こんなに…一緒の時間が愛おしい。こうして居ることが堪らなく切ない。また数時間したら離れて、次いつ会えるか解らないかも知れない。どうしてもそう思ってしまうから。
やっぱり刹那的だから?そしてハラハラするから?だから余計愛おしくなるの?
ぁ、…ん。…ん゙。
「…真希、…今は俺だけ…」
…甘噛みされた。
「ぁ、…はい…」
本当だ。色んな事で頭を巡らせてしまっては折角の二人の時間が薄くなってしまう…勿体ない…。
「武蔵さんだけ…」