勘違いも捨てたもんじゃない

「真希…何も聞いて無いけど、どうする?今夜のうちに帰るか?それとも、朝帰るか?」

「ゔ〜ん。…平日だから…」

ずーっと居たいのは山々なんだけど、武蔵さんの事もある。

「うん」

「武蔵さんは、明日、朝、早いのですか?」

「まあ、比較的早いうちに準備はし始める」

「そうですよね。
私に構わないでください。夜にしても朝にしても勝手に帰りますから」

「そんな訳にはいかない」

「ううん、いいんです。武蔵さんは武蔵さんのペースを崩さないでいつも通りにしてください。だって咄嗟に間に合わなかったら困るもの」

…。

「そこまで気を遣うなよ。真希…俺達これからどうする?」

「え?」

将来のこと?急にそんな話…。何も…、そこまで考えていなかった。

「俺は、難しくなったら秘書は辞めてもいいと思ってるんだ」

「え?何の話…」

難しいって……。

「何をどう考えるか、いきなりだから、全く具体的ではないんだけど」

「は、い…」

「真希はどう考えてる?このまま…こんな関係のままでいいのか?」

こんな関係って、何…どういう事?

「会える時に会って、関係を持つ、そんな関係。今はそうだろ?」

今は確かに、現実はそう。だけど、それだけとは思いたくない。でも……だけの関係でいいのかって事?……確認…。

「それとも、結婚を考えてつき合う?」

あ、…。

「結婚を考えてつき合っていても、今の状態の会い方で真希は気持ち持続出来る?虚しく思ったりしないか?
刺激が欲しいだけなんじゃないのかとか、思わないか?会えないのにつき合ってるっていう意味はあるのかって。現実、知り合ったばかりなのに始めから会えないでいる。そんなの、ないよな、凄く惹かれ合ってるっていうのにって。
…何してるんだろう、これってなんだろうって思わないならいいけど」

会い方にスリルはあると思う…。そういう感覚が好きなの?…やっぱり何かに縛られるようなのは嫌なの?今まで決まった人も居なかったって言ってた。それで良かったって。それに慣れてるんじゃないのかな…。この聞き方は武蔵さんがそう思っているって事……?
会えないなら秘書を辞めるっていうの?それは極端過ぎない?それは、あの人の秘書だから?

「俺は変わらない。結婚をするならそのつもりで居るから。虚しいなんて微塵も思わない。
会える時間が貴重だと思うように、真希との出会いは貴重な出会いだったと思ってる。どういう形で結婚生活を送りたいか…いつも家に居なくても平気なのか、…すれ違いみたいになると嫌なのか。最初から解ってることだから平気だとか。色々パターンがあるから、簡単では無いけど」

「私…まだ、今が、精一杯というか、今はまだそこまで…何も考えて無かったから…」

会える事にただ、嬉しさを感じて。そんなことは、まだ…考えるなんて、高望みなんじゃないかって…。

「…そうか、うん。そうだよな。まだ気持ちが盛り上がってる最中だもんな。俺だって本当のところはそうだ。俺はどこか焦っているんだと思う。真希とあいつが知り合いだったから。浩雅の存在に」

…とは言いながら私の年齢を気にしてくれているのかも知れない。だって今日は誕生日…。それほど若くないこと意識したかも知れない。

「ねえ、猛君」

「んぉ、お、何…」

「今日は甘えてもいい日ですよね?」

抱き着いた。

「…ん、いいよ」

「じゃあ、…こうやって、私に抱かせて?」

「真希の抱き枕か…」

「はい。難しい事はもう、今日は言わないで…」

「ああ、そうだな。…好きにしていいぞ?」

「あっ、…もう、…あ、じっとしててください。好きにしていいのは私の方なんですよ?」

「甘えても…いい日なんだろ?甘えにくいだろ?だから俺に任せろ。こんなの…こんなに密着して真希を感じてるのに、じっとしてるなんて無理だろ…んん…真希…」
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