勘違いも捨てたもんじゃない


最寄りの駅から最終の電車で帰って来た。
じゃあ、駅まででも送ると言うのを断った。
送って貰う程、駅は遠く無い、むしろ近い…離れがたくなってしまうから部屋の玄関までが良かった。
部屋の中ならリビングであれ玄関であれ、離れたくなくて抱きついても誰にも見られないから。だから、抱き着いて、暫く離れられなかった。甘えたかった。

はぁ、帰られるのは嫌なもんだな、って、武蔵さんがボソッと言った…。
会えなくて胸が苦しくて、会っても切なくて。
本当、好きの始まりはザワザワ心が騒いで落ち着けない。大人なのに…キュンと切ない。この切なさが愛おしいかも…。

はぁ、…指輪…。貰ってしまった。嵌め直してくれた指輪をした左手を眺めた。
誕生日だけど、こんなに早く指輪とか貰っていいのかな。武蔵さんはそんなに重く考えていないかも知れない。単にプレゼントに困ったから、行き着いた物が指輪だったのかも。
…でも…とても深い意味を持っているのかも知れない。結婚とか、話に出すくらいだもの。

用意してくれていたご飯は結局そこそこに…。
バースデーケーキにろうそくを立てて消したのなんていつ振りだっただろう。


ブー、…。

【帰ったのか?】

あ、…連絡するって忘れてた。

【はい、無事に帰って来てます】

【忘れてただろ】

【はい、ごめんなさい】

【心配するだろ、夜中一人なんだから。無事なら良かった。大丈夫か?】

しっかりしなきゃ。余計な心配をさせてしまった。身体も大丈夫。

【大丈夫。嬉しくて、指輪を見てたら忘れてしまいました】

【…全く、上手いな】

…違う。

【違います。本当だから。上手いとか、そんなのでは無いです】

冗談にしても、そんな風に思われたくない。

【解ってるよ。じゃあ、おやすみ】

あ、もう終わり。

【はい、おやすみなさい】

携帯を胸で握りしめた…はぁ、やっぱり、文字にだってドキドキする。だから連絡、したいけどしない方がいいっていう武蔵さんの言う事も解る。思いが募る元だから。

結婚か…。いい歳をして…ううん。いい歳をしてるからこそ、考える事はもう…止めていた。
意識して気にしていたのは三十前迄くらいだったかな。なんだか、期限が迫ってるような気がしてたのは確か…。
それからはもう…。結婚が具体的ではない理由は相手が居なかったこともある。

一緒に居られるだけでもいい、そんな、縁がある人に会えたら、くらいにどこかで希望的に思っていた。
…もう今日からアラフォーだ。……結婚…子供が欲しいと思ったら年々難しくなっていく。…んー。
アラフォーって言って、ひと括りにされても幅はあるんだから。…なり立てと、ぎりの差はあるんだから。
35歳は35歳って言い方でいいんだから…。
< 60 / 150 >

この作品をシェア

pagetop