勘違いも捨てたもんじゃない
押し出すとか、そんな…そういう、それほどの気持ちにはならない。こういう感じ、慣れ?いつものことだともう、そういう風に思ってしまう。だから?楽しんでる?だとしたら私は…最低だ。
「急かせてはいけないね」
「え?」
「こうして、私を部屋から押し出せないでいる事。やはり私は少しは期待してしまう。急いては事を仕損じると言うし。時間が必要みたいだね、…どう話すのか」
「…え?」
「好きになる時は冷静では無いのに、何故こんな時は冷静に判断する時間を欲しがるんだろうね。決断して、それが失敗だったと思いたくないからだろうか。だから迷う、迷ってることにしたい。…失敗しても取り返せばいいのに。私は君の迷惑なんて考えずに、変わらず連絡もするし、マンションの下にも来る。それ以外のコトもする。言ってるはずだよね?相手にしなくていいからって。来て欲しいと私が言って君が来なくても勝手に待ってる。連絡先だって、削除してくれたっていい。嫌なら着信拒否してくれていいんだから。
すまない…、情けないが、もうそろそろ帰らないと睡魔が来そうだ…。では、今夜は、私が帰ると決めて、帰る事にしよう」
…。
ドアノブに手を掛けていた。
「…待って。待ってください。帰らないで…」
「ん?」
袖を摘んだ。
「…危ないから」
「…それが、その言い方が…自分に逃げ道を作っていると言うんだよ」
…。
「でも…あんな風に、わざとですか?眠くなるかも知れないなんて言われて…聞いて、そんなんじゃ、運転は危ない…そう思ってしまうでしょ?」
「そうだよ?でもそれは君の取り方次第、君の感情だ。帰らせたらいい事だ。その後でどうなっても、君が心配する事では無い。関係無いだろ?私が私の意思で車に乗ると言っているのだから」
…。
「危ないのは君の方だ。いい加減、解らない?
居てもいいという事、私を帰らさないという事は、君が危ないという事だよ?もう私の気持ちはバレてる。今はまだ、こうして話していられるのは、私がただ大人ぶって、紳士で居ようとしているだけだからだよ?今の私は中身は若僧と同じだ、子供だ。我が儘に欲しいモノは欲しいと思っている。…目の前に居るんだ。大人のふりにも我慢の限界があるんだよ」
…。
「私に、ベッドを使ってくれ、自分はソファーに寝るから、とでも言うつもりでいたかな?それなら大丈夫だからと」
…。
「そんなのは無駄だよ?言わなくても…理由は解ってるはずだ」
…。
「それとも、それを期待しているのかな?
手段の為なら、どういう風にでも、都合良く解釈してしまうんだよ?人とはそういうモノだ。帰るという人間を君が引き止めたんだから…」
…。
「もう、ずっと、一方的な押し問答ばかりだ」
…。
「とにかく…死にはしない」
(RRRR…)
「武蔵か。休んでいるところを悪いが迎えに来てくれ…ああ。場所は、解ってるな?…俺の車は置いて帰る…ああ、大丈夫だ。明日…ああ…いや、いい、休みだから、俺が取りに来る。下に居るから。
……という訳だ。じゃあ、おやすみ」
あ、え…。
手を静かに離された。
「散々私から揺さぶっておいて、その気にさせて、挙げ句帰るつもりかって、思ってるかな?
フ…違うか…」
…そんな、こ、と…。何言ってるのか…。
「…はぁ。どんなに欲しくても、シてはいけない時もある。私にとってはまだ時期尚早だ。今シては後悔する。これでも、うんと辛抱しているのだからな?武蔵とは今、顔を会わせたくないだろ?」
あ、…。
「うさぎ…」
「あぁ、あれは…私だと思って抱いて寝てくれて構わないよ?ハハ。…放っておかれると、うさぎは寂しがるからね」
…それは無い、けど。確かにビッグサイズだけど…。
「…じゃあ」
頬に手を触れ、帰って行った。