勘違いも捨てたもんじゃない

女性は押しに弱いとも言う。皆が皆では無いが、諦める事無く、好きと言われ続ける事は、決して嫌な気はしないモノだろう。一度断って、それっきりなら、その程度のモノだったのかと思うものでもある。

この車。実は同じモデル、同じ色のものが俺のうちの駐車場にも停めてある。
ナンバーまで記憶するなら、きちんと見分けられるだろうが、ぱっと見なら区別はつかないし、しようとも思わないだろう、外観が同じなのだから。
理由は、簡単。何かがあった時の為だ。追跡を逃れる為。しつこい相手を撒く為だ。その為に用意してある。だけど会社の物では無い。これは俺の車だ。

誕生日に真希を乗せて帰って来たのは俺の車。
真希だって多分気がついてはいないだろう。会社の近くで待ち、車に引き込んで俺を見るまで、浩雅が待って居ると思っていたのだろうから。俺を見て驚いた様子が何よりの証拠だった。

あの日、浩雅は何も行動しようとしてなかったから、真希の誕生日だと知らなかったんだ。…俺はその日に何とかしたいと必死だった。
だけど…もしかしたら、浩雅の立場なら、誕生日を祝う事、一週間後でも十日後でも、喜んで貰えるんじゃないだろうか。

真希は誕生日自体を忘れているくらいの感覚だったんだ。どの日でも、誕生日だったんだよなってお祝いを言えば、きっとそれで嬉しかったのかも知れない。そうして喜ばせられるのは浩雅の位置なら出来る。気持ちの問題だ。
相手にどういう立場で感じるか。
意外な日に、意外な人から言われるおめでとうは嬉しいものだ。逆に、祝ってくれるものだと思っている人に、当日何もされなかったらがっかりするものだ。やっぱり俺は、当日をはずす訳にはいかなかったよな。

まともに会えない日は続くと思う。あまり必死に会おうとするのもどうかと思う。会いたいと思う間隔が近いのか、遠いと思うのか、今くらいが相手を恋しく思う時間が沢山あっていいのかも知れない。今、気持ちと会える時間は反比例だ。本音は会えるなら沢山会いたいに決まってる…。会えない事は、もの凄く好きで堪らない気持ちがもっと増えていく、それはそれでいいと思う。求める気持ちが強くなり過ぎて、そればかりになりそうな事…それでは…終わってしまうが。……はぁ、俺は一体…。

こんなに好きになる事に考えを巡らせたのは、大人になってから無いんじゃないのか。…随分といい大人にはなっているのに…。ずっと適当で…済ませてきた。欲しいときに欲しい相手とだ。当たり前か…、別に、人を好きになるとかどうでもいいと思っていたんだから。…俺は…人をちゃんと好きになって恋愛をしたことがない。好きになると何だか落ち着かなくて苛々に似た感情も半端なくあって、衝動はあって当たり前だよな…。理屈じゃ到底無理だ。
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